「いい街では磁場のようなものを感じます。白金に素敵な店が多いのは、自然に引き寄せられているからかもしれません」と久住さん。
久住さんには、白金でお気に入りの通りがあるという。街路樹のイチョウ並木が美しい白金のメインストリート「プラチナ通り」かと思いきや、さにあらず。
「恵比寿駅と白金高輪駅を結ぶ1本の道があるんです。恵比寿三丁目の交差点から白金高輪方面に向かって歩いてみると、通り沿いにはわりと古い建物が多い。古いといっても、たぶん戦後に建てられたものですね。昭和的な木造一軒家だったり、昔は商店だったと思われる家屋だったり。だから決して豪華な建築物ではないのですけれど、よく見るとちゃんとつくられていたりする。ああ、いい仕事してるな、なんて思いながらのんびり歩くわけです。建築に興味がない人には、変わった人に見えているかもしれませんね」
305号線沿いに立ち並ぶ古い建物。看板建築と呼ばれるレトロな街並みがどこかほっとさせる。
こちらもにも古い建物が。ちょうど白金5丁目、6丁目付近にあたる。
白金の魅力をひと言で表現すると「バランスのよさ」だと久住さんは言う。
「建物と緑のバランスがいいんです。街の中に東京都庭園美術館や八芳園、白金氷川神社などがあり、わりと大きな面積を占めている。僕が気持ちいいな、と感じる場所に共通しているのが、そのバランス感覚。磁場とか気の流れとかを生みやすいのかもしれません。開発されると街は変わり、好き嫌いの意見が分かれてしまう。もちろん白金にも新しいものが入ってくるけれど、あまりゆるがない芯の強さを感じます。東京は変化が早くて、それがいいところのひとつ。でも、住むところは落ち着けるとか安らげるとか、そういう感覚がいちばん大事だと思います。だから、白金は生活する場所に向いている。そう考えています」
大きく変わりゆく東京の中で、穏やかに変化する。そこにいること自体が、心地よい。そんな「白金らしさ」に久住さんは魅力を感じているようだ。
雷神山児童遊園までの緑道。気分転換に散歩するのにもちょうどいい。
大通りから奥に入ると緑豊かな小道があるのも特徴だ。
白金はグルメな人が集う街。久住さんが気になる飲食店はどこなのだろう。
「路地裏にあるフランツというレストランは好きですね。木造家屋をリノベした店で、だから白金の華やかなイメージとは少し違うのだけれど、隠れ家っぽくていい感じです。それから、プラチナ通りで数年前にオープンしたザ テンダーハウス ダイニング。どうしても建築に目がいってしまうのですけど、ファサードがいいんです。デザインの力を感じます」
立体型の格子が目を引くザ テンダーハウス ダイニングのファサード。デザインは建築家の小坂竜。石や木などの自然素材が周囲の環境に馴染む。
古民家で楽しめるフレンチ、フランツの店内。写真右側の壁は久住さんによる仕事だ。
もし、久住さんがプラチナ通りで一軒の建物を任されたらどうするか、聞いてみた。
「新しい建物ができたね、ではなく、これって前からあったっけ。見た人がそう思うような建物になるといいですね。都心でありながら、急激な変化にはさらされず少しずつ変化していく。白金は、そんな街だと感じています」
アトラスタワー白金レジデンシャル
所在地:東京都港区白金1-343-16(地番)
交通:東京メトロ南北線・都営三田線「白金高輪」駅徒歩3分
構造・規模:鉄筋コンクリート造、地上23階、地下1階
総戸数:94戸
間取り:1DK~3LDK
専有面積:33.38~114.12㎡
竣工予定:2023年9月中旬
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