居酒屋でも「最初の一杯はハイボール」が当たり前になり、すっかり日本人の日常に定着した感があるウイスキー。とはいえ、専門用語が難しい、飲み方がわからない――などの理由で、気軽に家で楽しむことにまだトライできていない人も多いのでは? そこで今回は、コンビニやちょっといいスーパーなど身近な店で買えて、日常に飲むのに最適な、とびきりおいしいウイスキーを紹介しよう。セレクトしてくれたのは、“居酒屋以上、バー未満”を謳って人気を博す門前仲町の店、「酒肆一村(しゅしいっそん)」のオーナー、大野尚人さんだ。それぞれのウイスキーとマッチするおつまみも教えてもらったので、ぜひ家飲みで試してみてほしい。
1.「シーバスリーガル ミズナラ 12年」――スコッチとジャパニーズの融合。
2.「竹鶴ピュアモルト」――穏やかな味わいは日本ウイスキーの真骨頂。
3.「ラガヴーリン16年」――ピートの香りと重なるモルトのコク・甘み。
4.「オールドパー 12年」――”前割り”にして毎日の晩酌に。
5.「オールド グランダッド80」――心地よい香りで食中酒向きのバーボン
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「シーバスリーガル ミズナラ 12年」――スコッチとジャパニーズの融合。
フルーツに似た香りが親しみやすく、世界中で愛飲されるスコッチウイスキー「シーバスリーガル 12年」。完熟したリンゴのような味わいと、ナッツの風味も感じる。その特別バージョンがこちらで、モルト原酒とグレーン原酒とを配合したブレンデッドウイスキーを、日本原産の希少なミズナラ樽でマリッジして仕上げている。香りはオレンジや西洋ナシのように瑞々しく、味わいもより繊細でなめらかなものへと変貌を遂げた。
「スコッチウイスキーなのに、ジャパニーズウイスキーのように親しみやすいのが魅力です」。その上品な飲み口を堪能するなら、ストレートで飲むのがお薦め、と大野さん。ウイスキーの味わいが優しいため、「ベーコンのようなスモーク料理と合わせると、調和が取れます」という。
「竹鶴ピュアモルト」――穏やかな味わいは日本ウイスキーの真骨頂。
世界の五大ウイスキーにも数えられる、日本ウイスキー。その礎を築いた、ニッカウヰスキー 創業者・竹鶴政孝のモルト製造、ブレンドの知識と技術を受け継ぎ、集大成として登場した商品が「竹鶴ピュアモルト」だ。モルト原酒だけを用いて、ブレンデッドウイスキーのごとくマイルドな口当たりを生み出している。
「じんわりしみるモルトのコク、穏やかに漂うピート香。飲み口にも日本人らしい謙虚さが感じられます。ジャパニーズウイスキーの凄みを象徴する一本」と大野さん。優しい味わいは氷が解けると薄まるため、ウイスキー、ソーダ、グラスともに冷蔵庫でキンキンに冷やしてから、ノンアイスハイボールで飲むのがお薦めだという。「かんぴょう巻きのような旨味の強いものと合わせると、やわらかな飲み口がグッと引き立ちます」
「ラガヴーリン16年」――ピートの香りと重なるモルトのコク・甘み。
スコットランド・アイラ島のラガヴーリン蒸溜所が生産するシングルモルト。大麦麦芽は、ピート(泥炭)の燻煙で乾かされることでウイスキーの原料となるが、このピート香こそがスモーキーな風味の正体。とりわけアイラ島のスコッチはピートの風味が濃厚で、「ラガヴーリン」の鋭いピート香は世界中のウイスキーファンを痺れさせている。
「ピーティーさに加えて、モルトが醸すコクと甘み、それらの三位一体ぶりが素晴らしい。どれかひとつでも崩れたら、均衡が破れてしまう。絶妙なバランスで成り立っています」。ロックグラスの氷が解け、自然にその3つの風味が合わさる頃合いが飲み時、と大野さん。「濃厚なプリンと一緒に、いやむしろプリンにそのままかけてみて。ミルク系のカクテルのような味わいを楽しめます」
「オールドパー 12年」――”前割り”にして毎日の晩酌に。
1909年にリリースされた、スコッチウイスキーを代表する銘柄「オールドパー」。モルトウイスキーと、グレーンウイスキーをバランスよく配合し、まろやかな飲み口は日本でも長きにわたって愛されている。大野さんは言う。「ピート香も控えめで、飲み手にピタッと寄り添うような味わい。日常的に飲みたい1本です」
飲み方は、焼酎よろしく”前割り”がお薦めとのことで、水とウイスキーは2対1の割合が理想的だという。「グラスの中で粒子が混ざり合うので、より親しみやすい一杯になります。ただし前割りは口当たりがいいので、飲み過ぎには注意」。合わせるのは肉じゃがや焼き鳥など、甘辛い醤油系の和食。オールドパーの黒糖に似た甘みが料理を引き立て、最後は舌先にスモーキーな余韻を残していく。
「オールド グランダッド80」――心地よい香りで食中酒向きのバーボン
アメリカ・ケンタッキー州のバーボン郡で生まれたウイスキーが、バーボンだ。トウモロコシを主原料とし、内側を焦がした新樽で熟成されることで、独特の赤みがかった色合いと、華やかな香りとを併せもつ。世界でも幅広く飲まれるウイスキーだが、個性的であるがゆえに、どこか食後酒のイメージがある。
「バーボンは香りが立ちすぎるものも多いですが、これは上品な香り。風味とのバランスも取れています」と大野さん。オレンジピールを加えて丸みのある酸を利かせれば、飲み口にも奥行きが出る。「ソーダ割りにすれば、黒酢の酢豚と相性抜群。まろやかな酸味が『オールド グランダッド』の味わいを引き立てます」
大野尚人●1980年千葉県生まれ。大学卒業後、会社員として働くも、酒場好きがこうじて飲食の道へ。「エコール辻? 東京」に通ったあと、銀座「銀座KAN」、市ヶ谷「あて 煮込 肴」を経て、2013年に門前仲町「酒亭 沿露目」を開業、16年には同じく門前仲町に「酒肆一村」をオープン。旬の食材と全国の珍味を組み合わせた献立と、サワーやウイスキー、クラフトジンまでも網羅した幅広い酒のラインアップで人気店に躍り出る。