京都の老舗料亭で、北海道食材と自然派ワインを愉しむイベントが開催。

  • 写真:舟田知史
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北海道余市郡仁木町の自然派ワインに加え、ゲスト参加したシャブリのドメーヌ・セルヴァン、余市のキャメル・ファームのワインもふるまわれた。

北海道が食材の宝庫であることは周知の事実。しかし、世界におけるその価値は、実は私たちが思っているよりも、はるか上にあるのかもしれない。つい先日、世界一予約の取れないレストランともいわれるコペンハーゲンの「noma(ノーマ)」のワインリストに、余市町のワイナリー、ドメーヌ・タカヒコの「ナナツモリ ピノ・ノワール 2017」がラインアップされるニュースが飛び込んできた。ノーマは、レストラン誌主催の「世界のベストレストラン50」で4度も1位を受賞している、まさに世界一といえるレストランであるが、そのノーマのソムリエであるアヴァ・ミース・リストさんから、「ジュラ、ブルゴーニュのワインとともに試飲した。すばらしいフレーバーと葡萄の表現力だった!」というコメントが届いたそうだ。いま北海道ワイン、とくに余市町・仁木町の自然派ワインの品質は、世界から注目され始めているといっていい。

そんな北海道の食材や自然派ワインを京料理を通して味わうイベントが、去る1月27日に京都の老舗料亭「京料理 本家たん熊 本店」にて開催された。参加したワインメーカーは、余市からドメーヌ・タカヒコとドメーヌ・モン、そしてモンガク谷ワイナリー。そして隣町である仁木町から、ベリーベリーファームが参加した。ゲストとして招待されたのは、ミシュラン2ツ星を獲得し続けている銀座「ドミニク・ブシェ トーキョー」の料理長ドミニク・ブシェさんや三越伊勢丹のバイヤーである小幡尚裕さん、そしてフランス・シャブリのドメーヌ・セルヴァンの当主フランソワ・セルヴァンさんなど約13名だ。

ちなみに、なぜ北海道ワインのイベントを京都で? と思う方もいるかもしれない。しかし、その縁は深い。「京料理に欠かせないダシは、北海道産の良質な昆布がないとできないのです。もちろん新鮮な魚介や野菜も不可欠です。京料理は北海道の食材に支えられているといってもいいですね」と話すのは本家たん熊 本店の料理人・栗栖純一さん。そんな信頼関係もあり、今回のイベント開催につながった。

ずわい蟹のみぞれ酢かけの先付からスターし、あんこう丸仕立ての煮物、そして鰊の焼きものなど、料理が続く。どれも今回の参加ワイナリーと同郷の余市産の魚介が料理の主役。それぞれ一品ごとに異なる、ワインとのマリアージュを楽しんだ。

ブシェさんは「ドメーヌ・タカヒコのピノ・ノワールは世界のトップレベル。モンガク谷の白ワインは、帆立との相性が抜群」と、自身のレストランでも北海道の食材とワインを使った料理を試してみたいと絶賛。また、シャブリ醸造家のセルヴァンさんは「ドメーヌ・タカヒコは、京料理のダシに通ずる優しい旨味を感じさせる味わい。いつか世界が日本ワインの製法を学ぶ日が来るだろう」と話す。さらに、日本には日本酒や漬物など発酵食品に関する素養があるから、新しいワインづくりにも巧みに生かすことができるのではないか、と考察した。

こうした料理とワインのマッチングイベントは大小さまざまあるが、やはり酒と食事は互いの理解を深める最高のパートナーである、と感じさせる時間だった。わずかな試飲や齧ったくらいでは本当の魅力はわからない。少人数のイベントで、料理とお酒を囲んでとことん話すからこそ、生産者と料理人との理解が深まる。そもそも料理人が生産者にわざわざ会いにいくのも、味はもちろんその思いに触れるためではないか。

司会を務めたのは、Pen Onlineの連載「ワインは、自然派。」でお馴染みのフード・ワインジャーナリスト、鹿取みゆきさん。

料理のスタート前には、舞子による演技も。フランスからのゲストにとっては特に印象的だったそうだ。

フランスの新聞『ル・モンド』の記者、フィリップ・メスメールさんに料理の説明をする料理人の栗栖さん。

札幌のミシュラン1ツ星レストラン「TAKAO」の料理人、高尾僚将さんも参加。シケレペなど、北海道特有のスパイスを、ドミニク・ブシェさんに説明する。

ドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦さん。日本のピノ・ノワールを代表する存在として知られる。そのワインづくりのレベルの高さは、コペンハーゲンの「noma」に採用となったことが証明している。

イベントが行われたのは、京都の老舗料亭「京料理 本家たん熊 本店」。

料理のほとんどは、ワインと同じく余市産の食材が用いられた。こちらは鰊の焼きもの。

イベントは、ランチタイムに鴨川を望む部屋で行われた。