カーボン・グラファイトを知っているだろうか。炭を高温で熱して不純物を燃焼・気化させた純粋な炭、つまり炭素素材を黒鉛化したものだ。高い熱伝導性、導電性、耐摩耗性をもち、鉄と比較すると比重は4分の1、遠赤外線放射率は5倍にもおよぶ。無限の可能性を秘め、金属に変わる最先端の素材として注目を集めている。
その塊を削り出してつくった新たな調理道具が、ANAORI kakugama。半世紀以上にわたってカーボン・グラファイトの技術開発を実践してきたANAORI と、日本料理の本質を追求する料理人、小山裕久の共同開発で生まれたプロダクトだ。
優れた遠赤外線効果で、理想的な火入れを実現
茶道の形式にヒントを得たキューブ型、均一な熱の対流を可能にする、江戸時代に主流だった釜のカタチを再現した内部の「いも形」。そして無垢のヒノキの中蓋に、茶室建築の最高位面取り技術「几帳面」をあしらった角や縁と、ミニマルなフォルムに日本古来の知恵や美意識が詰まっている。グリルパン機能を備えた波型の上蓋もユニークだ。
最大の魅力は、1台で焼く、煮る、蒸す、揚げる、炊くといった調理法すべてをこなせること。焼き物は短時間で中まで火が通ってふっくらジューシーに、煮物は下処理なしに素材の個性と出汁の旨みが渾然一体の味わいに。カーボン・グラファイトの優れた遠赤外線効果や熱伝導性、肉厚構造が、加熱による食材の細胞破壊を最小化し、理想的な火入れを実現してくれる。IH、ガス、オーブンとすべての熱源に対応するのもポイントだ。
国の食文化や土地の食材、シェフの哲学と技に出合うツアー
自然のパワーを尊重したANAORI kakugama。自然と向き合い本質を見つめること、人がそこに見い出すものを「ナチュラリティ」と呼び、ブランドのコンセプトに掲げている。その哲学に賛同する世界中のトップシェフたちとコラボレートする「ナチュラリティ・ツアー by ANAORI」が4月10日より始まった。世界各都市の24人のシェフが自分の店でANAORI kakugamaを使った料理を提供し、リレー形式につないでいく。
トップバッターを飾ったのは、富山の「キュイジーヌ・レジョナル・レヴォ」の谷口英司シェフ。利賀村の山奥で、究極の地産地消を追求した、前衛的地方料理のオーベルジュを営む注目の料理人だ。谷口シェフがANAORI kakugamaで作ったのは、春先の熊の肉や内臓を水とともに極々弱火でゆっくり7時間ほど煮込み、周辺で採れる山菜を合わせてアザミのソースを絡めたもの。驚くほどクセがないやさしい味わいとそれぞれの食感が楽しい一皿で、熊の骨からとったフォンが深みを添えている。「この地域は標高が高いため沸点が低く、普段からゆっくりした火入れを心がけているが、ANAORI kakugamaのやわらかで均一な火の回りは最適だった。密閉性が高いことも濃密な火入れが実現できてよかった」とシェフ。
日本を皮切りに、豪州、北中南米、アジア、ヨーロッパの24都市へと受け渡されていくバトン。各都市のシェフたちが、この日本の最先端素材と伝統が融合した調理道具でどのようなイノベーティブな料理を生み出すのか、期待は高まるばかりだ。
ANAORI
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