スポーツテイストのウエアの中でもここ数シーズン、特に注目を集めているのが「フィッシング」をテーマにするアイテムだ。「サウス2 ウエスト8」がつくったフィッシングジャケットは、日本伝統の釣法である「テンカラ」にちなんでデザインされたもの。ロッドホルダーやゲームポケットなど、実際の釣行でテストを重ねることで磨き上げられた、高い実用性あるマルチポケットが搭載されたデザインが秀逸。素材は今シーズン新たに採用されたポリエステルギャバジン。厚手で独特の艶のある素材がジャケットに立体感をもたらしている。本格的なフィッシングでの使用はもちろんのこと、タウンユースに取り入れやすいファッション性の高さもこのジャケットの大きな魅力だ。

メンズファッションでは機能がデザインの重要なポイントになる場合が多いが、その機能をビジュアルとして一目瞭然で見せるのがマルチポケットだろう。ドイツを代表するファッションブランド「ボス」が今シーズン発表したのは、ポケットを見事にデザインしたバックパックだ。フラップにジッパー付きポケットを備え、本体には収納力たっぷりの2つのポケットを配する。フラップを留めるストラップと、ポケットに付いたシルバーのボタンがアクセントとして利いている。イタリア製ナイロンとレザーのコンビネーション素材で、モダンな印象をもちながら、ポケットなどの意匠で、懐かしいテイストを醸し出す。そんなバランスこそ、老舗らしいデザイン力と言えるのだ。

世界中のアパレルが現在追い掛けている最大のトレンドとはなにか。それはすなわち、“技術革新”である。サステイナビリティに基づく服づくりを筆頭に、各社は新しい技術で差別化を図っている。この2019年秋冬にも画期的な素材が新登場した。「ザ・ノース・フェイス」による「フューチャーライト」だ。汗の蒸気を外に逃がす透湿性をうたう防水素材も、現実的にはムレを防げない。ところがこれは、水は通さず空気はスムーズに通す。ポリウレタン繊維をミクロ単位で吹き重ねることでムレない防水性を実現させた。「温度差が激しい山での脱ぎ着が面倒」という登山家の意見が開発のきっかけになったこのジャケット、さまざまなアイテムへの応用にも期待したい。

みなが凝ったデザイナーズを着た1980年代から、仕事着もカジュアルになった現在に至るまで、あらゆるモノが出尽くした感のあるファッションアイテム。ところが今季、斬新な切り口で新デザインに挑んだブランドが現れた。イタリアの「ジー ゼニア」である。彼らが目をつけたのは、最新テクノロジーと服とを融合させる試み。ハイテクにより変化した生活スタイルに対応する衣服の提案だ。発表されたブルゾンは内部にバッテリーを搭載し、胸ポケットにワイヤレス充電対応のスマホを入れるだけで自動的に充電される機能をもつ。電気系統の機材を取り外せば手洗いでの水洗いも可能だ。3層構造のソフトシェルで背中には中綿が仕込まれ、撥水性や保温性にも優れている。服としての完成度も高いこのブルゾンこそ、物欲を刺激する新時代ウエアだ。

昨年、創立200周年を迎えたアメリカのトラッドの総本山「ブルックス ブラザーズ」。今季、そんな老舗が発表したのが、特別に織られたウールデニムを使ったセットアップです。生地は英国羊毛を使用して原料からこだわったもの。愛知県一宮にある機屋で、熟練した職人が生地に負担をかけない低速織機で織り、三重県四日市にある工場で鈴鹿山脈の伏流水を使い、ていねいに仕上げられています。さらに生地表面に細やかなガス焼きを施して表面の毛羽を落として、ウールデニムのハリとコシを表現。ウールツイルならではの光沢をもたらし、ネイビーの深い色合いも印象的です。伝統と革新を掲げてきた、ブルックス ブラザーズらしい試みと言えます。デニムを素材に採用した、品格さえ感じさせる逸品です。