2019年秋冬のファッションスタイルに関して、ひとつの疑問があります。それは、「ボリュームのある服装を足元で支えるのにふさわしいのは、ダッドスニーカーかワークブーツか？」ということ。答えは二分されそうですが、エッジーな感性の大人はワークブーツを選ぶのではないでしょうか。スニーカーの快適さをスポイルしてでも、重厚で貫禄のあるブーツに新鮮な魅力があるからです。ここに掲載した一足はアメリカのワークブーツの代名詞、「レッド・ウィング」が製造したもの。人気セレクトショップの別注により、シックなオールブラックに生まれ変わりました。アイレットの数も増やされ、これまでになく洗練された表情をまとっています。武骨な味のあるレッド・ウィングが、都会履き仕様に品よく格上げされた “傑作” と呼びたい一足です。

今季、シューズを新調するならレザーシューズがお薦めです。そろそろ足元をスニーカーからチェンジして、スポーツスタイルからの脱却を図りませんか？ 旬の気分なのは、ドレッシーすぎないカジュアルシューズ。ここに挙げたのは1949年に英国で誕生した、「ジョージコックス」のシンボリックな厚底シューズ「クリーパー」です。50年代のテディボーイ、60年代のロックンロール、70年代のパンクに至るまで脈々と受け継がれてきたサブカルチャーの申し子です。ただし掲載のモデルは、定番をアレンジした特別な一足。「コム デ ギャルソン・オム プリュス」の手により、アンクルにベルトが、フロントにリングが付け足されました。尖っていた若かりし頃の懐かしさを胸に秘めつつ、レトロモダンな感覚で履きこなしましょう。

父、母方の祖父ともテーラーという環境に育ったデザイナーが、日本屈指のテーラードファクトリーで手仕事からマシンメイドまで学び、2015年にスタートさせたブランドが「ラファーボラ」です。ブランド名はイタリア語で「物語」の意味で、身に着ける人それぞれの物語を紡いでほしいという願いが込められています。好事家を中心にしたアポイント制のオーダー専門ブランドとして始まりましたが、19年の春夏からはプレタポルテがスタート。秋冬の新作「スーパーショートジャケット」は、ミリタリーアイテムの代表である「MA-1」風のサテン素材でジャケットをデザインしました。一枚仕立てながら、身体を包み込むような立体的なつくり。テーラードに長い経験をもつブランドらしい仕上がりです。

2019年秋冬のメンズワードローブに、ミリタリーのエッセンスは欠かせません。機能本位のウエアに、ブランドごとにさまざまな解釈を加えたアレンジに注目が集まっています。「タクタク」は、デザイナー島瀬敬章さんが14年春夏からスタートさせたブランドです。コンセプトとなる「時間」を、着る者の個性をシンボリックに際立たせる既製服を提案します。そんな島瀬さんにとって、ミリタリーは格好の素材です。生地やポケットなどのディテールはミリタリー要素を活かしながら、ビッグなシルエットでモダンさを漂わせています。別布を使った襟のつくりが秀逸で、ストールのような形状に仕上げています。首元に巻いてもいいし、そのまま垂らしても使えます。ありそうでなかった、唯一無二のコートと言えます。

ブラックとレッド、2枚のハートをつなぐシルバーピン。このアイテムは「プラダ」の新作ブローチです。2019年AWコレクションのインスピレーション源のひとつ、フランケンシュタインの心臓を模したようなハート型のデザインが実にユニーク。ポケットチーフのごとく胸を飾るのが王道の使い方ですが、デニムのポケットに刺してアクセントにするのもいいでしょう。さらに、風が吹いて外れがちな首にかけたストールを固定させるのにも便利です。このアクセサリーには、道具として役立つもうひとつのディテールがああります。それはピンの先端がフックで、カラビナとしても使えること。キーホルダーにもミニケースのリング留めにもなり、使い道はお好みしだい。ときにはハートを取り外しピンだけを用いたり、「デザイン+実用性」の妙を存分に愉しみましょう。