映画『E.T.』で主人公が背負っていたバックパックは、あの人気ブランドだった!
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一1982年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の映画『E.T.』。地球に取り残された宇宙人と少年の交流を描いたこの作品は、たんなるSFの枠を超え、多くの人の心に永く残る名作となった。今回は、この名画を彩る80年代の“アメカジ”の名品について語る。
エリオット(ヘンリー・トーマス)、マイケル(ロバート・マクノートン)、マイケルの悪友三人衆たちが乗り、最後にはE.T.とともに空を駆け巡るのがBMXだ。BMXとはBicycle Motocrossと呼ばれる自転車競技の略で、その競技に使われる自転車のこともBMXと呼ぶ。1970年代にアメリカのカリフォルニアで少年たちが20インチのクルーザーバイク(自転車)でモトクロスを真似たことがその始まり。今年開催が予定されている東京オリンピックでは、BMXが新種目として採用されている。
自宅近くのトウモロコシ畑でE.T.と初めて遭遇したエリオット。その時は驚きのあまりE.T.を見失ってしまったが、翌日BMXに乗って捜索に出かける。この時に背負っていたのが、ザ・ノース・フェイスのデイパックだ。白のカラーリングで、カリフォルニアにあるヨセミテ公園のシンボル・ハーフドームをモチーフにしたブランドのロゴマークがはっきりと映っている。ガレージを出たエリオットは町を駆け抜け、近くの森でチョコレートを撒きながらE.T.を誘い出そうとするのだ。
エリオットが背負った「デイパック」とは、名前の通りアウトドアで1日の行動に必要なものを収め、背負うように設計されたもの。ハイキングや登山で使うことを想定されたものだが、いつしか通学などで使われるようになった。同じようなヨーロッパ式の「リュックサック」が紐で縛るのに対して、開口部にファスナーを使ったのが機能性を重視するアメリカらしく、革新的だった。70年代には日本にも紹介され、アメカジフリークのマストアイテムとなったが、最近では通勤などにも使う人が増えている。
ザ・ノース・フェイスは1968年にカリフォルニアのバークレーで創業したアウトドアブランドで、日本でも人気が高い老舗中の老舗。
今回、紹介するデイパックは、「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル」から発売されているもの。70年代に同ブランドでつくられていたデイパックをベースにして、素材やディテールをアップデートさせた新作だ。中間部でセパレートして収納できる2層式の仕様は、当時を彷彿させる懐かしいデザイン。素材には撥水性を備えて、テントにも使われる最新の「PARAクロス」が使われている。
進化しながらも、ブランドのルーツを感じさせる秀逸なデザイン。『E.T.』と同じく、古きよき時代のアメリカを感じさせるのではないだろうか。
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