80年代に"未来"を象徴していた、カシオのデータバンクシリーズ
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一タイムトラベルものの映画において、時計はとても重要な小道具だ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85年)ではタイトルバックの前に時計の音が聞こえ、映画がスタートすると壁時計や置き時計、目覚まし時計がたくさん映し出される。実はこの場面で後半のドク(クリストファー・ロイド)の運命を連想させる置き時計が画面に登場する。興味がある人はぜひビデオでじっくり見てみるといい。
主人公マーティ(マイケル・J・フィックス)がロールアップしたデニムブルソンの左腕にいつも着けていた腕時計が、カシオ スタンダードのデータバンクシリーズ「CA-50」というモデルだ。このモデルはすでに廃番になってしまったが、ほとんど同じデザインの「CA-53W」が後継機としていまでも復刻されることがある。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでこの時計がよく見えるのが1作目だ。JVCのビデオカムでデロリアンとドクを撮影しているマーティの左腕に、この時計のテンキーがはっきりと映る場面がある。実は1作目でも2作目でも、宣伝用のポスターにこの腕時計が描かれていることをご存知だろうか。1作目のポスターではマーティがこのデジタル時計を凝視しているようにも見える。
もともと計算機メーカーとして創立したカシオが、世界初のオートカレンダーを搭載した電子腕時計「カシオトロン」を発売したのが1974年。電話番号を記憶できるデータバンクシリーズの「CD-40」が発売されたは84年。この「CA-50」も84年にデビューを果たしたと言われる。
カシオがつくったこのデジタルウォッチ、液晶画面の下にテンキーが並ぶ近未来的なデザインで、電卓で計算もできるしストップウォッチやアラーム機能までも付いている。スマートフォンどころか携帯電話さえもまだまだ普及していなかった80年代において、このモデルはいわばスマートウォッチ。十分未来的であったに違いない。
「未来は決まっていない。未来は自分で切り開くものだ」。PART3のエンディングでドク(クリストファー・ロイド)が親友マーティに向かって語りかける言葉だ。この時計も未来を切り開いてきた1本に違いない。
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