カリスマ大統領、ジョン・F・ケネディの若々しさを代弁するファッション
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第2回 シャルベのレギュラーカラーシャツ
ジョン・フィッツジェラルド・ケネディは1961年、43歳という若さで、第35代アメリカ合衆国大統領に就任した。「ニューフロンティア」と呼ばれる政策を掲げ、大統領就任演説では「あなたの国があなたのために何をできるかと問わないで欲しい。あなたがあなたの国に何ができるかと問うて欲しい」と語った。新しい政治スタイルで、アメリカを牽引した大統領だ。
ハンサムでスポーツマンを思わせる、日焼けした精悍な顔立ち。2ボタンのスーツで美しい妻・ジャクリーンと颯爽と歩く姿に、アメリカはもちろん、世界中が新しい時代を感じ、ふたりの行動、振る舞いもが注目された。
ソ連との冷戦の緊張状態の最中に大統領に就任した彼は、1962年のキューバ危機を乗り越え人類を核戦争の危機から救い、「60年代の終わりまでに月に人間を送り込む」と高らかに宣言。人々はアメリカ、いや世界に未来と夢を感じさせた。
しかし1964年11月22日午後12時30分ごろ、ジャクリーンとともに訪れたテキサス州ダラスで暗殺される。就任期間はわずか1037日、3年に満たなかったが、これほどまでに世界中の人々の心に残り、いまなおカリスマ性を感じる大統領はいない。今回は世界が敬愛した米大統領ケネディ が愛用した名品を追う。
ケネディ大統領は公式な場所でボタンダウンのシャツを着用しなかったことで知られている。もちろん、ケネディもアイビーリーグを卒業しているので、プライベートな場所ではボタンダウンシャツを着ていた。しかし、ある意味でボタンダウンのシャツはアメリカのエスタブリッシュメント(社会的権威階級)の象徴的なアイテムになっていた。そういったイメージを考えて、ケネディはスーツを着る場面では、レギュラーカラーのシャツをあえて合わせていたのだ。
では、そのシャツのブランドがどこのものだったのかというと、実はアメリカのものではなく、フランス製だった。しかも1838年に誕生した世界で最も長い歴史をもつ名門シャツメーカー、シャルベだ。創業者はクリストフル・シャルベ。1889年、パリ万国博覧会で開催されたヨーロッパのシャツ製造業者を集めたコンテストで金賞と審査員大賞を受賞し、世界にその名を轟かせた。いまでもパリの老舗が並ぶヴァンドーム広場に店を構えている。そこにある棚には図書館さながらに膨大な量の生地が並ぶ。ケネディはオーダーでシャツを仕立ていたが、彼もこの生地の中から好みの白を選んだのだろうか。
シャルベは顧客リストを一切公表していないが、ケネディ以外にもフランスのド・ゴール大統領も同店のシャツを愛用、ジャン・コクトーやゲーリー・クーパーといった稀代のダンディたちもこの店に通っていたと言われている。余談になるがルパン三世が着ていたのもシェルベのシャツで、1000枚ももっていたという設定になっている。ケネディはシャルベのシャツを何枚もっていたのだろうか。
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