ロックスターのなかでも特にセンスが光る、ポール・ウェラーの英国定番スタイル
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第2回 ジョン スメドレーのタートルネックセーター
ポール・ウェラーは1958年生まれ、イングランド出身のミュージシャン。77年、パンクを象徴するバンド、ザ・ジャムのボーカリスト&ギタリストとして鮮烈なデビューを飾り、モッズ・スタイルの伝道者として注目されました。10枚目のシングル『ゴーイング・アンダーグラウンド』が全英1位に輝き、イギリスにおけるナンバーワンバンドと評されるまでになりました。しかし、約6年間活動し、人気絶頂のうちにバンドは解散してしまいます。83年にはバンドのオルガンプレーヤーだったミック・タルボットとザ・スタイルカウンシルを結成。このバンドではパンクと決別したかのようにポップを貫き、洒落たサウンドを披露していました。84年に発表されたファーストアルバム『カフェ・ブリュ』は世界中で高い評価を受け、日本でも大ヒット。音楽性とともに注目を集めたのは、彼の高いファッションセンスでした。英国を中心にした定番アイテムを基本にしながらも、どこか彼の巧みなセンスが光る着こなしは際立ちました。ソロになってからは自分でファッションブランドを運営していたこともあります。
今回はそんなファッション好きのミュージシャン、ポール・ウェラーが着こなしたアイテムを紹介します。
ポール・ウェラーが育ったのはロンドンから南西26マイル先、ウォータールー駅から電車で30分ほどのところにあるウォーキングという街。大都市ロンドンのベッドタウンです。彼はその街のシアウォーターという学校に通っていました。「若者たちが集まれば、そこには必ずファッション・リーダーが生まれる。シアウォーターではそれがポール・ウェラーだった。ヤツは流行りのものは何でも持っていたし、毎週違うファッションで現れるんだ」。彼の伝記とも言える『ポール・ウェラー』(ジョン・リード著 藤井美保訳 リットー・ミュージック刊)には、彼の若い頃の逸話がこう書かれています。
83年に結成されたザ・スタイルカウンシルは89年には自然消滅しますが、90年代に入ると彼はソロで活躍するようになり、サードアルバム『スタンリー・ロード』が全英1位に輝きます。その時代に彼が着こなしていたのはビスポークのスーツ。その頃の写真だと思われるものを見ると、ストライプのスーツに英国の老舗ニットメーカー「ジョン スメドレー」のタートルネックセーターをあえて合わせていました。1784年から続く、英国のクラフツマンシップが香るニットメーカーであり、世界中に顧客にもつ英国屈指のブランド。ポール・ウェラーの佇まいは特に達人級です。シンプルなコーディネートのなかにこそ、紳士のスタイルの真髄があるのでしょう。
問い合わせ先/リーミルズ エージェンシー TEL:03-3473-7007
https://www.johnsmedley.jp