ロックスターのなかでも特にセンスが光る、ポール・ウェラーの英国定番スタイル
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第1回 アクアスキュータムのステンカラーコート
ポール・ウェラーは1958年生まれ、イングランド出身のミュージシャン。77年、パンクを象徴するバンド、ザ・ジャムのボーカリスト&ギタリストとして鮮烈なデビューを飾り、モッズ・スタイルの伝道者として注目されました。10枚目のシングル『ゴーイング・アンダーグラウンド』が全英1位に輝き、イギリスにおけるナンバーワンバンドと評されるまでになりました。しかし、約6年間活動し、人気絶頂のうちにバンドは解散してしまいます。83年にはバンドのオルガンプレーヤーだったミック・タルボットとザ・スタイルカウンシルを結成。このバンドではパンクと決別したかのようにポップを貫き、洒落たサウンドを披露していました。84年に発表されたファーストアルバム『カフェ・ブリュ』は世界中で高い評価を受け、日本でも大ヒット。音楽性とともに注目を集めたのは、彼の高いファッションセンスでした。英国を中心にした定番アイテムを基本にしながらも、どこか彼の巧みなセンスが光る着こなしは際立ちました。ソロになってからは自分でファッションブランドを運営していたこともあります。
今回はそんなファッション好きのミュージシャン、ポール・ウェラーが着こなしたアイテムを紹介します。
ナビゲーター/小暮 昌弘
法政大学卒業。学生時代よりアパレルメーカーで勤務。1982年から(株)婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に勤務。『25ans』を経て『Men’s Club』で主にファッションページを。2005年から2007年まで『Men’s Club』編集長。2009年よりフリーに。(株)LOST &FOUNDを設立。現在は、『Pen』『GQ』『Men’s Precious』などで作文を担当。
ザ・スタイルカウンシルがファーストアルバム『カフェ・ブリュ』を発表したのは1984年3月。このアルバムは全英2位に輝き、収録曲の『マイ・エヴァー・チェンジング・ムーズ』は、アメリカや日本でもスマッシュヒットになりました。このアルバムのカバーでポール・ウェラーが着ていたのが、英国を代表する老舗ブランド「アクアスキュータム」のオフホワイトのステンカラーコートです。「ステンカラー」とは日本式の呼び名で、「バルカマーン」と呼ぶのが正式です。撥水加工が施されたコットンが用いられ、センターベントを備え、着丈が長めなのが英国流です。カバーでポール・ウェラーが着ているのも膝が隠れるくらいの長さで、彼はこのコートにリーバイスのブルージーンズを穿き、足元はスリッポンを思わせる革靴を合わせ、ソックスは白にしています。2014年秋に発行された『Men’s Precious』で、ビームスのクリエイティブディレクター、青野賢一氏は「アルバムタイトルのイメージと相まって、日本で“フレンチアイビー”という言葉が生まれるほどの人気を誇った」と語っています。当時のバンドの写真を見ると、ダブルブレストで金ボタンのブレザーに白のジーンズを合わせ、インナーにボーダーニットを着ているものもあります。ティーンエージャーからファッションに興味をもっていたポール・ウェラー。このアルバムの着こなしはいま見てもまったく古びていないどころか、新鮮に映ります。彼の生まれもったファッションセンスが感じ取れます。
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