ダサ格好いい、『アメリカン・グラフィティ』に登場する青二才たちが着ていた王道服。
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第3回 コットンパンツ
1962年の夏、あなたはどこにいましたか?……珠玉の青春映画として知られる『アメリカン・グラフィティ』(73年)のアメリカでの宣伝文句です。舞台は62年のカリフォルニア北部の地方都市。主人公はそこに住む高校生たち。卒業後の旅立ちを目前にした夕刻から夜明けまでの夏の一夜をグラフィティ(=落書き)のように綴った青春群像劇です。監督は、あの『スター・ウォーズ』シリーズの生みの親、ジョージ・ルーカス。製作はフランシス・フォード・コッポラです。後に有名になるリチャード・ドレイファス、チャールズ・マーティン・スミス、ハリソン・フォードなどが出演。後に『アポロ13号』などの監督として大成するロン・ハワードも主役のひとりに名を連ねています。
彼らが身に着けているのは、ボタンダウンシャツにコットンパンツといったアイビーの王道スタイル、あるいはTシャツにジーンズといったロックンロールスタイル。映画全編に流れるオールディーズナンバーとともに、当時の“アメリカ”のファッションや風俗が見事に描かれた名画です。
今回は、そんな70年代の名画に登場したファッションアイテムを考えてみました。
物語前半に行われるダンスパーティで、プラターズの大ヒット作『煙が目にしみる』をバックに、主人公の一人のスティーヴ(ロン・ハワード)とガールフレンドのローリー(シンディ・ウィリアムズ)がチークダンスを踊る印象的なシーンがあります。
ちょっと余談になりますが、当時の学校でのダンスパーティでは、体育館の床を傷つけないように靴を脱いで踊るのがルール。そんな「ソック・ホップ」と呼ばれるパーティがこの映画でも再現されています。そのパーティに参加したスティーヴやカート(リチャード・ドレイファス)が履いているのがオフホワイトのコットンパンツです。
パンツのシルエットは「パイプドステム」と呼ばれるもので、パイプの柄のように、上から下まで細身でストンと落ちるように見えることから名付けられました。映画では、カートは靴の甲にかかるくらいの長さで、スティーヴはくるぶしが見えるくらいの長さで、白ソックスを覗かせて履きこなしています。
当時の雰囲気をもったパンツがアメリカの老舗「J.プレス」にあります。「J.プレス」は1902年、アメリカ東部のコネチカット州に誕生。アイビーリーガーに長く愛され、アメリカ大統領も着用した由緒あるブランドです。
パイプドステムのシルエット、ノープリーツのデザイン、ヒップポケット近くの尾錠のディテールなど、1950〜60年代のアイビーリーガーによく履かれていたコットンパンツを彷彿とさせるデザインが、このパンツの特徴です。
進化している点は素材です。コットンとポリエステルを混紡、さらにポリウレタンを加えていますので伸縮性があります。見た目はスッキリと、履き心地は快適に。アイビーファン垂涎のディテールをもちながら、現代のトラッドスタイルにもマッチするようにつくられたモデルと言えます。
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