稀代のプレイボーイ、ジェームズ・ボンドの女性たちを虜にするセクシーなスタイル
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第1回 パイル素材のポロシャツとオール・イン・ワン
「マイ・ネーム・イズ・ボンド、ジェームズ・ボンド」。世界でいちばん有名な英国諜報部員、ジェームズ・ボンドの自己紹介の言葉です。原作を書いたのは英国人作家のイアン・フレミング。ジャマイカの別荘で書き上げられた処女作『カジノ・ロワイヤル』が1953年に刊行され、ショーン・コネリーが初代ボンドを演じた映画版007シリーズ第1作『007 ドクター・ノオ』が公開されたのが62年。以来、2015年に6代目ボンド、ダニエル・クレイグが主演した『007 スペクター』まで24作品の映画がつくられ、スパイアクションの金字塔として世界中のファンから愛されています。
そのなかで登場したアーカイブ・ワードローブを限定で復刻させたのが、ロンドンに拠点を置くブランド「オールバー・ブラウン」。2007年に創業し、優雅なリゾートでの休日からインスピレーションを得たスイムウエアをはじめ、シャツ、ポロシャツなどのアフターリゾートを楽しむための英国流ホリデーウエアを揃えるブランドです。『007 スカイフォール』(12年)では劇中でダニエル・クレイグが同ブランドの水着を着用していますが、レオナルド・ディカプリオ、ヒュー・ジャックマンなどにも愛用されています。そんな英国ブランドが注目したのは、007映画のどのシーン、どんなスタイルでしょうか。
ナビゲーター/小暮 昌弘
法政大学卒業。学生時代よりアパレルメーカーで勤務。1982年から(株)婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に勤務。『25ans』を経て『Men’s Club』で主にファッションページを。2005年から2007年まで『Men’s Club』編集長。2009年よりフリーに。(株)LOST &FOUNDを設立。現在は、『Pen』『GQ』『Men’s Precious』などで作文を担当。
イアン・フレミングの原作を忠実に映画化した007シリーズ第1作の『007 ドクター・ノオ』(日本初公開時のタイトルは『007は殺しの番号』)が公開されたのは1962年。初代ジェームズ・ボンドを演じたのはスコットランド出身のショーン・コネリーです。
映画冒頭のカジノでの場面ではその後のボンドの代名詞にもなるタキシード姿で登場。この後もサヴィル・ロウのテーラー、アンソニー・シンクレアが仕立てた英国紳士らしいスタイルで強くてセクシーなボンドを印象付けました。敵であるドクター・ノオが拠点とするジャマイカの島に渡った時に着ていたのが、1960年代のリゾートウエアらしいパイル地のポロシャツです。
今回のコレクションではこのポロシャツがリアルに再現されています。素材はコットン100%のタオル生地、色もライトブルーで、映画の中でボンドは同系色のLポケパンツに合わせていました。
シリーズ3作目の『007 ゴールドフィンガー』(64年)では、やはりパイル地のオール・イン・ワンタイプのビーチウエアが登場しました。しかも色も同じようなブルー。今回、そういった個性的なアイテムも復刻されています。ポロシャツとショートパンツが繋がっているようなデザインで、共地でセンターには金具が付いたベルトも縫い付けられています。往年のヨーロッパやアメリカのリゾートウエアらしいデザインではありませんか。これもコットン100%のタオル素材で仕立てられています。
劇中でその服をマイアミのビーチで着用しているボンドは、女性を一目で虜にしてしまいます。素肌の上に着るこういうリゾートウエアが本当に似合うのです。