ポップアートの旗手、アンディ・ウォーホルがファッションアイコンだった理由。
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第1回 「セント・ジェームス」のボーダーシャツ
誰もが15分なら有名人になれる。いずれそんな時代が来るだろう——ポップアートの旗手、アンディ・ウォーホルの有名な言葉です。1960〜80年代に大活躍したウォーホルは、キャンベル・スープ、マリリン・モンローなどの作品で知られ、20世紀を代表する巨匠のひとりと言われています。絵画だけでなく、音楽や映画などのプロデュース、雑誌まで発刊するなどマルチメディアアーティストの先駆けとなった人物です。また、ウォーホルはファッションアイコンとしても知られ、多くのパーティやイベントで撮られた写真が残されています。意外にも着こなすアイテムはベーシックなデザインの名品ばかり。ボタンダウンシャツ、ジーンズ、ローファーなどが、銀髪のかつらをかぶった彼の手にかかると、まるで彼の作品のような斬新で、ポップなアイテムに見えてくるから不思議です。そんなアンディ・ウォーホルが愛した名品をひも解いてみましょう。
1960年代初頭、アーティストとして有名になり始めたころ、アンディ・ウォーホルが好んで着こなしたのがボーダーストライプのTシャツです。『伝記 ウォーホル』(フレッド・ローレンス・ガイルズ著 文藝春秋刊)によれば「黒のレザー・ジャケットに黒いブーツを使用していた。ほとんどいつでも、フランスの船乗りが着る横縞のTシャツを着ていた」とあります。このTシャツこそ、ボーダーシャツです。いまでも多くの人に愛用される定番的なアイテムです。実はボーダーシャツは日本流の呼び方で、フランスではブルターニュ地方のマリンシャツという意味で「ブルトンマリン」、または「ブルトントップ」と呼ばれることが多く、フランス軍やロシア軍の制服としても採用されていました。ウォーホル以外にも、パブロ・ピカソ、ジェームス・ディーン、カート・コバーン、ジャン・ポール・ゴルチエなど、多くの有名人に愛された名品です。ウォーホルはさまざまな太さのストライプのボーダーシャツを着ていますが、時には、ボーダーシャツにダブルブレストのスーツを着て、その上からレザーのライダースジャケットをレイヤードする着こなしも披露していました。
今回紹介するのはフランスの名品、「セント・ジェームス」のボーダーシャツです。1889年、フランス北部、ノルマンディーで創業された老舗です。この「ウェッソン(OUESSANT)」は、同ブランドのシンボル的存在で、ボートネック、長袖のシャツの原型はノルマンディー地方の漁師やヨットマンなど船乗りに愛用されていたTシャツで、まさに完成されたデザインです。ボーダーシャツでウォーホルを意識するなら、まっさきに選ぶべきブランドではないでしょうか。
問い合わせ先/セント ジェームス代官山店 TEL:03-3464-7132