ショーン・コネリーのように着こなす、華やかな大人のフォーマルウェア
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第3回 「アルバート サーストン」のサスペンダー
男子服の王者は何といってもイブニング・テール・コート(夜会燕尾服)である。これを着ると男たちは最も華麗な姿になる——と著書の中で書いたのは英国王室御用達のデザイナーであり、著述家のハーディ・エイミスです。燕尾服を着用する機会はなかなかありませんが、タキシードなどのフォーマルスタイルはいまでもメンズウエアの華と言えます。それを最も艶っぽく着こなしたのは、イアン・フレミングが創造した英国諜報員を演じたショーン・コネリーかもしれません。正式な催しに出席するのにはフォーマルスタイルのルーツがあるものです。「ブラックタイでお越しください」と書かれた招待状が届いたら、それはタキシードで出席しなければなりません。カジュアルなパーティでは趣向を凝らしたスタイルも楽しめますが、正式なパーティに出席しなければならない場面も必ずあるはずです。フォーマルウエアのドレスコードは知っていて損なことはないはずです。その歴史や謂れを辿りながら、フォーマルウエアについて勉強してみましょう。第3回は1820年に英国で創業されたアルバート サーストンのサスペンダーを紹介します。
サスペンダーもアメリカや日本と英国では呼び名が異なります。「サスペンダー」と呼ぶのはアメリカや日本など。英国では「ブレーシーズ(braces)」と複数形で呼びます。「brace」とは締め付けるという意味です。18世紀に登場するサスペンダー(ブレーシーズ)は乗馬用のパンツを身体にフィットさせるために考案されたと言われています。
英国式の股上の深いパンツ、特にサヴィルロウなどのビスポークテーラーで仕立てられたパンツ(余談ですが、これも英国式にはトラウザーズが正式)の多くはサスペンダー仕様になっているのが通例です。前に4つ、後ろの2つのボタン付けて、そこにサスペンダーの先端の革のループを留めて、肩から吊り下げてパンツを穿くのがサスペンダーの基本的な使い方です。フォーマルスタイルにおいても、タキシードのパンツはベルトレス仕様が一般的ですので、このサスペンダーが必要になってきます。ショーン・コネリーもそんなサスペンダーのスタイルを、映画の中で幾度となく見せています。
ここで紹介している「アルバート サーストン」は1820年に英国で創業された歴史あるメーカーです。自社ブランド以外にも英国をはじめとして世界のメンズブランド、ショップなどのOEM製品を製造しています。映画『ウォール街』でマイケル・ダグラスが身につけたのも同ブランドのサスペンダーで、当時のエグゼクティブを象徴するアイテムとして多くの人の記憶に残っているでしょう。ロンドンの工場では昔ながらの製法で、サスペンダーやベルト、アームバンドをつくっていますが、最近のコレクションでは、留め具がボタンとクリップ式の両方で使えるモデルも登場しています。これなら、カジュアルなパンツにも装着して、気軽にサスペンダーを楽しめます。
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