ヴィンテージデニムウエアは、20世紀の社会を雄弁に語る証人だ。常に大衆の生活とともにあり、その時代の空気を深く吸い込んで変化してきた。着る労働者の要求に応じて改良され、製造技術が進化すればディテールも生地も新しくなった。デニムウエアは工場でつくられる大量生産の“着る道具”だからこそ、家電や車と同様に時代ごとの比較がしやすい。ヴィンテージのコレクターは、デニムウエアを通してそれぞれの時代背景を感じている。
1930年代にはジャケットもパンツも、現代まで続く型がほぼ出揃っていた。縫製ステッチに凝り金属パーツもふんだんに使われていたが、これが劇的に動いたのが40年代である。自国が第2次世界大戦に参戦した翌年の42年に、アメリカは軍需産業に力を入れるため国内企業に物資の簡素化を命令。デニムウエアも必要最小限の機能をもつものへと対応を余儀なくされた。この時誕生したのがいわゆる「大戦モデル」だ。デニムウエアの歴史の中で、極めて特異なデザイン変更の事例である。
カウボーイに愛用者が多かったリーも例外でなく、ボタンもステッチ数も減らしたモデルを製造。ジャケットの背中のバックルベルトは外され、パンツはファスナーが軍に供給されたため入手できず、旧式のボタン開閉に戻った。今回リーのアーカイブシリーズから復刻された「WW Ⅱ」は、この頃のモデルをオリジナルに限りなく近いクオリティで再現したものだ。製品洗いする前の糊がついたリジッドタイプのみが用意されている。当時のように防縮加工された生地だが洗濯でやや縮み、ねじれも生じるのは、まさしくヴィンテージの味わいだ。
当時は仕方なくシンプルにアレンジしたこれらの服が、80年が過ぎた現代人の目で眺めると考え抜かれたミニマルデザインに思えるから面白い。いまファッションとして着るなら、戦前・戦後のモデルより洗練された装いができそうだ。誕生した頃の世界に思いを馳せたい人も、デニムウエアに新鮮な魅力を感じる人も、手に入れて損のない逸品である。
関連記事:スプリングコートを履いて、スプリングコートのポップアップショップに行く。@渋谷
新しいカラーリングで、あのエルエルビーンの定番トートが大変身を遂げた。
プーマが「スウェード」を続々と復刻! 2021年はレトロスニーカーが足元を席巻する予感。
●リー・ジャパン
https://lee-japan.jp/shop/contact/contact.aspx
※ 2021年1月8日より当面の間、新型コロナウィルス対策により電話サポート業務を休止し、商品問い合わせはサイト内のフォームにて対応。
https://lee-japan.jp/