写真:宇田川 淳
Vol.72 原産国のモンゴル政府が立ち上げたカシミアブランド、優しい風合いに癒やされます。
保温性の高さと手触りのよさで知られるカシミアは、寒暖差の大きな高地に住むカシミアヤギの毛です。このヤギは寒さから身を守るために、外側の毛の内側にも柔らかな産毛を生やします。人がそれを梳き取ったり、屋外にちらばった産毛を拾い集めてカシミア糸ができあがるのです。高価になるのは採取の手間がかかり、量も限られるから。さらに輸出されて製品になると、関税その他も上乗せされていきます。品質面でも上質な毛は希少性が増し、世界中で奪い合いともいえる現象もおきます。
カシミアの生産国の約7割は「内モンゴル自治区」を有する中国、約2割が「外モンゴル」とも呼ばれるモンゴルとされています。モンゴル国にとってカシミアは重要な産業です。ここに紹介する「ゴビ」は、1981年にモンゴル政府が日本の政府開発援助(ODA)により立ち上げた国営企業からスタートしたカシミアメーカー。我が国の無償援助により建設された工場も有するゴビは現在民営化され、新たなチャレンジを行っています。日本では2017年に羽田空港第1旅客ターミナル内に店舗がオープン。ファッション性の高い日本企画品も加わり、「クオリティ・プライス・デザイン」を満たすラインアップになりました。
使われた糸の中には、もともとの毛の色を生かした無染色品もあります。オーガニックであり、その優しさ、美しさも格別。見た目がよくて身体も快適で、さらに遊牧民とのフェアトレード取引やサステイナビリティといった社会性も実現されているのです。奥深いストーリーを秘めたゴビに袖を通し、その良さを体感してはいかがでしょうか。