写真:宇田川 淳
Vol.49 チェック柄がシャープで美しいカシミアマフラーこそ、英国生地メーカー「ジョシュア・エリス」の真骨頂です。
クリスマスシーズンを迎え、都心でも外を歩くと冷たい風に凍える日が増えてきました。今年は暖冬傾向と言われていますが、それでも本格的な冷え込みは間近に迫っています。首周りを覆うマフラーが恋しい季節の到来です。
マフラー選びでは、素材が重要です。最良の選択は、やはりカシミア。同じ分量のウールと比べ、保温性の高さが違います。そのしなやかさゆえに、巻いたときのボリュームが抑えられるのもカシミアのメリット。贅沢品でありながら、カシミアマフラーは実用の道具としても使い勝手がいいのです。
一方で色柄に目を向けると、今年らしさを感じるのがチェック柄です。近年人気の英国調であり、定番柄でもありますから、長く愛用しても流行遅れになりません。色彩は、鮮やかなものが旬です。冬の地味めな服装に色でアクセントを加えるのが、イマどきの洒落た着こなしです。
ここに紹介するマフラーのブランドは、上記の条件を満たす、「ジョシュア・エリス」。創業1767年の英国最古と称されるテキスタイルメーカーです。2016-17年秋冬にマフラーやストールを本格ローンチしたばかりながら、日本国内の有力店を席巻する勢いで展開が広がっています。注目ポイントはまず、チェック柄が充実していること。加えて、ツイード生地やコート用生地といった、紳士服の生地が得意なメーカーということも見逃せません。肉厚な風合いやシャープな配色は、男性好みといえる出来栄えです。
レッド系、ブルー系のブロック配色の大判ストールです。記事冒頭で紹介した大小のチェック柄が入り混じった品と比べ、アクティブでスポーティな印象があります。グラフィックはどこか80年代ふうでもあり、古着などのカジュアルな服装に華を添えるのにもちょうどいい仕上がりです。
ストール2点ともに(W70✕H190cm)¥56,160(税込)/ともにジョシュア・エリス(グリニッジ ショールーム TEL : 03-5774-1662)
スーツやジャケパンの服装によく馴染む、クリーンな色のマフラーです。コンパクトな大きさで、仕事でも休日でもデイリーに使いやすいでしょう。タッターソール(左)、グレンチェック(右)といった英国の伝統模様が、大人の風格を醸し出し、顔周りを上品に演出してくれます。
マフラー2点ともに(W30✕H180cm)¥24,840(税込)/ともにジョシュア・エリス(グリニッジ ショールーム TEL : 03-5774-1662)
英国・ヨークシャーのファクトリー
「マフラーやストールには一般的に、やわらかさ、軽さが求められます。対して服用の紡毛生地では、しっかり縮めて安定させた、重めの素材が求められます。この二つは真逆のコンテンツです。ただしマフラーやストールにおいても、生地づくりの技術と経験がなければ生産できません。現在でも全生産量の90%が紡毛生地であるジョシュア・エリスだからこそ、上質な製品をつくれるのです」
こう語るのは、ジョシュア・エリスのディレクターの山口浩久さん。老舗の生地メーカーが自社のオリジナルに力を注ぐ理由には、各国のハイブランドのディレクターが頻繁に代わり、そのたびに工場への注文が変動して経営が安定しないという時代背景があるようです。ディレクターの交代劇は、ファッション産業の未来を左右する深刻な問題を内包しているのです。
ジョシュア・エリスの製品の素晴らしさは、「ユナイテッドアローズ」、「エストネーション」、「ストラスブルゴ」、「シップス」、「伊勢丹 新宿店」、「阪急メンズ」などのハイセンスな店で取り扱われていることからもよく分かります。自分用にも贈りものにも、このうえなく素敵なコレクションです。