写真:宇田川 淳
Vol.37 シルク糸で縫われた北欧の最高級シャツには、何度も水洗いして着たい理由があります。
只者ではない、優雅な佇まいのロングシャツです。夏にこれ一枚をさらっと羽織り、クロップドパンツで足首をのぞかせサンダルを履けば、エスニックなリゾートスタイルの出来上がり。男女の装いに差がなくなってきた現代の感性にフィットする一着です。
光沢のあるコットン生地がたっぷりと使われ、クリーンな白ボタンがアクセント。両脇と胸にポケットもついています。ワンピースほどの長さがありつつも、シャープな襟やカフス、ポロシャツのような前開きといった要素が効いて、甘い印象はありません。リラックス感と緊張感とがいいバランスを保っています。手がけたのは、スウェーデンにアトリエを構えるシャツブランド、「アップルトゥリーズ(APPLETREES)」。
いつまでも長く着ることを想定した、北欧らしい考え方が彼らの根底に流れています。素材の種類も展開型数も絞り、定番として一着一着の完成度を追求。製造国はイタリアで、着心地のいいパターンや、芯を入れて固くした襟やカフスに、シャツ大国の実力が見て取れます。アップルトゥリーズのディテールの特徴のひとつが、縫製ステッチです。シルクの太い糸を使い、品よくドレスダウンさせています。
さらにもうひとつ、高級シャツとしては意外な特徴があります。それは、洗濯機による水洗いが可能なこと。すべてのシャツは、100回以上の洗濯に耐えるテストを経て、商品化されています(記事の後半に、洗濯後のテストサンプルを掲載)。エジプトのギザコットンの140双糸や120双糸の細い糸を高密度に織り上げた生地は、新品では光沢とハリがあります。水洗いするたびに光沢は減り、風合いもソフトに変化。色の濃い生地は薄くなり、シルクの縫製糸が縮み、ワークシャツのごとき味わいが加わります。
着ては洗う、を繰り返し、エイジング後を楽しみに待つアップルトゥリーズ。価格は相応に高価ですが、毎日着られる愛用品になる服です。なによりも、北欧の家具と同様に日本人の琴線に触れる、「さりげなくおしゃれ」なシャツであることは間違いありません!