写真:宇田川 淳
Vol.24 オブジェのようにミニマルで美しい、バッグブランド「Aeta」に見る新しい現代ニッポン
世界に名だたる高級バッグは、イタリアやフランス、スペインなど、ラグジュアリーな皮革産業と、モードファッションがある国で発展してきました。その流れは21世紀の現在も変わっていません。我が国ニッポンにも優れたバッグがありますが、アウトドアやワーク、ミリタリーなどを軸にしたカジュアルなものが大半です。惜しくも、白・黒・ネイビーといった色みの、シックな服を着る人が増えた現代に即したバッグは、あまりデザインされてきませんでした。
ここにご紹介する新進のドメスティックブランド「Aeta(アエタ)」は、これまでのニッポン的な “土っぽい味わい” とは方向性の異なる、モダンデザインの注目株です。私的なエピソードになりますが、予備知識なしに彼らのバッグ・小物に初めて触れた時、次のようなワードが思い浮かびました。「コンテンポラリー、モード、アート、ヨーロッパ、家具、オブジェ、ギャラリー、ストイック、インテリジェント……」。Aetaのプロダクトは、細部に至るまで徹底的に追い込まれています。キメの細かいレザーを大きな面積で使い、縫製ステッチを内側に隠してミニマルに。表地を黒レザーに、裏地をグレーのコットンにして、奥行きのあるグラデーションを表現。レザーの扱いは、ドレープさせた絹のドレスのごとくしなやか。世界水準と呼ぶにふさわしい仕上がりです。
上の写真のバックパックとショルダーストラップつきトートは、Aetaを代表するコレクションです。牛革のツギハギは最小限に抑えられ、風格のある佇まいになっています。バックパックの2本のストラップの先端が、開口部の前中心に取り付けられており、ストラップを引っ張ることでトップを軽く閉じることができます。底面は内側に茶のヌメ革がプレス圧着された、硬く安定したもの。
Aetaには、男女のどちらでも使える自由な表情があります。クオリティの高さに対し入手しやすい価格なのも特筆すべきポイント。レザーバッグの内側のポケットや、他のコレクションの紹介は、次ページでお届けしましょう。