オトナ男性が最初に入手する浴衣なら、渋みのある無地に近いものがお薦め。女性と出掛けたとき、相手の浴衣の色柄が華やかでも地味でも、オトコが悪目立ちせずに引き立て役になれるからです。そんなベーシックな浴衣を使い、「原宿本店 メンズ館」スタッフの鈴木拓真さんに「正統派」と「着崩し」のコーディネートを披露していただきました。
正統派スタイル
浴衣 ¥48,600、羽織 ¥46,440、下駄 ¥17,064(すべてユナイテッドアローズ)、帯 ¥16,200(十代目 山口源兵衛)、合財袋 ¥15,660(印傳屋)、扇子 ¥7,344(宮脇賣扇庵)
“着物” のように羽織を着たドレッシーなスタイルです。下駄を履き、合財袋(がっさいぶくろ)を持ち、扇子を帯に挟む小物使いが基本的なルール。ただし浴衣は本来は、風呂上がりに着た服で、近所への外出も可能だった簡易着。どのように着ようともフォーマルシーンで着用するのはNGです。洋服でいうシャツのような位置づけの浴衣の上に、ジャケット代わりの羽織を合わせ、シックなカジュアルアップを狙ったのがこのスタイル。羽織は現代のオトコに向けたユナイテッドアローズ独自の提案です。
浴衣に羽織、という新しい提案。
羽織はごく薄い化繊素材で透けており、浴衣の柄をチラ見せできます。帯はバナナの繊維でつくられたモダンなデザインです。
シカ革の上に漆で模様を描く、「印伝」技法の合財袋。
浴衣を着るときに荷物は大きな問題です。店のスタッフによると、「合財袋がもっともふさわしい」とのこと。財布やスマホなら袖の袂(振り袖でいう『振り』)に入れて持ち歩けます。合財袋まで揃えるのは難しいという人は、手持ちのバッグで対応しましょう。手掴みできるタイプなら良さそうなので、紙袋を模したレザーバッグや、巾着タイプのワンショルダーバッグを手持ちするなどでもいいと思います。
着崩しスタイル
浴衣 ¥48,600、帯 ¥16,200(すべてユナイテッドアローズ)、草履 ¥18,360(菱屋)、扇子 ¥7,344(宮脇賣扇庵)、帽子¥24,624(ポスト インペリアル)
小物を変えて、印象をカジュアルにした着崩しスタイルです。足元を草履にして、扇子、帯もすべてブルー系で揃えました。レトロなニッポンを感じさせる生成りのハットがアクセント。下腹位置で帯をきっちりと縛るのが、だらしなく見えない着こなしのコツです。衿は女性の着方と違って後ろにずらす(抜く)ことをせず、衿後ろを首に沿わせ、前をややゆったりめに。
「着丈は足首が出ない程度の長さがセオリーです。半ズボンを穿く『甚平』とごっちゃになり、短い丈をお望みの方もいらっしゃいますが、浴衣は履物を脱いだときに床すれすれになる長さが美しいと思います」と鈴木さん。
下駄よりもシックな印象になる草履。
草履のサイズ選びは、踵が少しはみ出すくらい小さめにすることを覚えておきましょう。下駄でも草履でも、男女で共通する履物選びのポイントです。歩きやすさといった機能性よりも、美しさが重視されています。浴衣はもっともカジュアルな和装ですから下駄履きが基本ですが、草履のほうが歩きやすく音も響かないため日常使いしやすいでしょう。
袂からチラ見えする裏面の柄も小粋。
この浴衣の表面の柄模様は、伝統的でポピュラーな「網代(あじろ)」。とても落ち着いた柄の生地ですが、実は裏面が派手な図案になっています。普段は人目から隠された箇所のデザインで遊ぶ、ニッポン古来の美意識に倣った浴衣です。
取材・撮影:高橋一史