ジョン スメドレーがふたつめの英国王室御用達を獲得! この栄誉ある称号...

ジョン スメドレーがふたつめの英国王室御用達を獲得! この栄誉ある称号を徹底解説しよう。

文:高橋一史

2021年4月1日に、英国王室御用達を認定するふたつめの称号を授与されたニットメーカー、ジョン スメドレー。

品格のあるハイゲージニットの代名詞的な存在、ジョン スメドレー。世界最高峰の綿素材である「シーアイランドコットン」の名を、この英国メーカーがよく使うことで知った人も多いのではないだろうか。長く着られる定番デザインで、日本でも揺るぎない地位を確立している。その彼らが2021年4月1日に、ロイヤルワラント(英国王室御用達)の称号を手にした。実はこれはジョン スメドレーが獲得したふたつめの称号である。最初は13年で、エリザベス女王から授けられた。今回はチャールズ皇太子からである。同じロイヤルワラントなのに2種類? 人が別個に与えるとはどういうこと?? 謎の多いこのシステムを総括してみよう。

ロイヤルワラントは各製品やブランド単位でなく、企業、店、個人に与えられる称号である。ジャンルも衣類、宝飾、家電、食品、美容から、建築、掃除、点検修理、整備まであらゆる分野におよぶ。獲得企業(及び個人)が最も多いのは食品で、管理する「ロイヤルワラント ホルダー協会」のサイトでは現在85の検索がヒットする。授与を申請できる条件は、「過去7年間のうち5年以上、英国王室と定期的及び継続的に取引」していること。その取引先とは、エリザベス女王、女王の夫のエディンバラ公、チャールズ皇太子の3名を指す。実は長年のこの3名体制が今年変わったのだが、それについては後述する。評価対象は私的な愛用品に限らず、訪問客用のものも含まれる。

各人が独自に決めるため、獲得できるのは1名分だけのケースがもっとも多い。ファッション分野でジョン スメドレーと同様にふたつ獲得している企業は、バーバリー(コート)、ジョンロブ(靴)、ハンター(防水ブーツ)、ジェームスロック(帽子)、ムスト(セーリングウエア)とごくわずか。さらに上をいく3つとなると、ギーブス&ホークスやダックスらのスーツ及び伝統衣装仕立て店に限られる。例外はバブアー(アウトドアウエア)で、カジュアルながらすべてのロイヤルワラントに輝く。なお称号ひとつでは、クロケット&ジョーンズ(靴)、トリッカーズ(靴)、ローク(靴)、デンツ(手袋)、エッティンガー(革小物)、コーギー(ニット)、ジョンストンズ オブ エルガン(マフラー、生地)、ターンブル&アッサー(シャツ)といった有名どころが名を連ねる。

それでは得られる特典はなんだろうか。自社製品に3名それぞれの紋章をつけられるのが最大のメリットだろう。王室が認めた信頼性があることを世界中にアピールできるのだ。レターセットや手帳を手掛けるスマイソンは3つの称号をもつが、彼らは製品ボックスや紙カードにすべての紋章を入れている。ただし協会によると、ロイヤルワラントはその対象が “最高” であるとのお墨付きではなく、王室が優先する製品やサービスのことと定義している。

この称号の効力は、最長5年まで。期限切れの前年に再審査され、基準に満たないと失われる。さらに授与した個人に由来するため、当人が亡くなると無効になってしまう。実はエディンバラ公は、21年4月に99歳で崩御している。現在はチャールズ皇太子がその名を継いだが、生前のエディンバラ公の紋章を製品につけられるのは2年間の猶予までとなる。

高価格帯のみならず、トワイニング(紅茶)、ケロッグ(シリアル)、ウォーカー(クッキー)、マキルヘニー(タバスコ)といったスーパーで買える食品にもロイヤルワラント企業の製品がある。協会が発足した1840年から続く英国伝統の権威を、身近な品で愉しむのも一興だ。

1 / 2p
Feature Culture 海と自然へのオマージュと、伝統を超えるロイヤル コペンハーゲンの新たな感性
Feature Culture 海と自然へのオマージュと、伝統を超えるロイヤル コペンハーゲンの新たな感性