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メゾンの物語を宿す、「エルメス」のカレッジリング
「個性的なファッション」というフレーズに、どこか距離を感じてしまう大人は少なくないはずだ。それが「奇抜」の同義語のように用いられがちだからだろうか。しかし、本当の個性とはシックでシンプルな装いからでも滲み出るもので、それをもつ人は間違いなく魅力的だ。そんなことを改めて確信させてくれるのが、今春届いたエルメスのリング。手彫りの型を使ってスタンピングしたエンブレムがシルバーの台座に輝くデザインは、カレッジリングの王道といえる。
そもそもカレッジリングはヨーロッパの貴族が家柄を示したシグネットリングがルーツとされ、英米の学生が卒業時に本人や母校の名を刻んで贈られたもの。このエルメスのリングにはメゾンのアイコンである四輪馬車と従者、そしてイニシャルであるHの文字が刻まれている。アイコンのもとになったのは一枚の絵だ。19世紀初頭のパリに生まれた画家、アルフレッド・ド・ドルーによるもので、馬車と従者のみが描かれている。それを踏襲した絵柄に込められたのは、「エルメスは最高の品物を用意します。けれど、それを御すのはお客様自身です」というメッセージだ。
コレクション名にもなっている「エクスリブリス」と呼ばれるデザインは、エルメスのアトリエの蔵書印にも用いられているもので、そこからは馬具商として始まったメゾンの起源と歴史の重み、ものづくりへの探究心が表れている。もちろん込められたメッセージを声高に叫ぶ必要はないし、持ち主だけが胸に秘めておくのも慎み深くて粋だ。しかし、そうした奥行きを楽しむ姿勢こそが大人の個性なのだと思えてならない。
【素材】シルバー、ピンクゴールド
【問い合わせ先】エルメスジャポン
TEL:03-3569-3300