日本のファスナー「YKK」が、世界シェアの40%以上を占めるトップメーカーであることをご存じだろうか。アパレル関係者がよく口にするその理由は、品質の高さだ。頑丈で壊れずスムーズに開閉する。ファスナーに求められる信頼性があるからこそ一流と認められたのだ。このように、メイド・イン・ジャパンのファッションアイテムが世界で愛されるのは、道具としての機能の高さにある。贅沢を追求するヨーロッパのラグジュアリーファッションとは方向性が異なる生活者目線が、我が国のスタイルを支えてきた。
こうした日本のプロダクトに、思いを寄せるラグジュアリーメゾンが現れた。イタリアの「フェンディ」である。毛皮で名を馳せ、高級な服地を使い、グッズ類も職人技を駆使する一流メゾンだ。デザインセンスにも定評がある彼らは、2019-20年秋冬シーズンに日本の「ポーター」とコラボしてナイロン素材のバッグをつくった。革小物の本場イタリアが、実用性を重視する日本プロダクトと手を結んだ画期的な出来事だった。
前回に続く20年春夏シーズンでも、新たな日本コラボが行われている。今回の相手は、1873(明治6)年に創業されたシューズメーカーの「ムーンスター」だ。底を圧着するバルカナイズド製法のキャンバスシューズは、つくりも仕上げも細部に至るまで精緻を極め、世界屈指のクオリティを誇る。コラボのベースになったハイカットとローカットの2型は、ゴム部分がアッパーまでせり上がり、雨天時の悪路でも歩ける全天候型のモデルである。ガーデニングやアウトドアといった自然に親しむ装いをテーマにした、フェンディのメンズコレクションと呼応するシューズになった。
1970〜80年代にパリコレに進出したデザイナーズ、90年代の原宿ストリートに代表されるように、日本発信ファッションが世界に影響を与えた例は少なくない。スポーツ用品や庶民的なファッションなら、現在も世界に広まっている。フェンディとムーンスターのコラボにより、趣味性の高いシューズでも日本の価値が認められることを願ってやまない。
※2020年 1月中旬より、世界のフェンディ直営店及び、下記ウエブサイトにて発売予定。
●問い合わせ先/フェンディ ジャパン
TEL:03-3514-6187
www.fendi.com/jp