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シンプルな服に隠された、
衣装デザインという出発点。
生まれ育った高知県の書店で、当時中学生だった松井征心は、一冊の本に目を奪われた。映画『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』に登場するアミダラ女王を表紙にした雑誌、『ハイファッション』だ。この出合いが、彼が将来進む道を決めたきっかけとなった出来事である。「アミダラ女王のコスチューム(衣装)に心をつかまれました。その時強く思ったんです、コスチュームデザイナーになろうって」
若くして独自の目線でファッションに触れた松井は、高校卒業後に上京、ファッション専門学校に入学。ここでの3年間も目標は変わらず、演劇の衣装に携わり着々とスキルを磨いていった。そんな松井が、東京ブランドに詳しい人に名の知れたメンズブランド「SISE(シセ)」を、学校を卒業して間もない2010年に立ち上げたのには、ユニークな理由がある。「実は、屋号が欲しかったんです。デザイナーとして『何々の誰々』、と呼ばれたかった。ブランドをやれば、『シセの松井征心』になる」
そうしてブランドをたち上げて7年が経つが、モード系とも称されるストイックな作風が現在まで続いている。「僕が影響を受けたのは、マルタンマルジェラやヨウジヤマモトだと思います。街中でTシャツ一枚でも素敵に着こなしている人にも影響されます。その人に似合っていて、ふと見てしまう、その感じです」
シセにはさまざまなファンがいて、韓国人俳優の大スター、カン・ドンウォンもそのひとりだ。松井とは公私ともに親しい間柄である。
「彼は東京のショップでシセを知り、気に入ってくれたそうです。その後に知り合いの紹介で会い、親しい仲に」
シセを中心に、周囲の世界を広げている松井。衣装デザインでも最近、大きな仕事を経験した。8月に全国公開された映画『ジョジョの奇妙な冒険ダイヤモンドは砕けない 第一章』の主要人物が着用した学ランだ。
「もともと制服が好きなので、そのデザインも得意でした。衣装はおもに黒一色で、演じた俳優さんから、『衣装のおかげで役に入れた』と言ってもらえたのが嬉しかったですね」
才能豊かなデザイナーと日本映画との結びつきが増えれば、映像のクオリティはより上がるに違いない。松井の後に続く、若い世代の出現にも期待したい。
「シセ」2017~18年秋冬のルックより。ブランドのアイコニックなスタイルは、ボリュームのあるトップス+クロップドパンツ。photo:VAL
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』で、岡田将生が着た学ラン衣装のデザイン。シルエットにこだわる松井らしさが表れている。
photo:VAL