東京の一日は長い──。静けさが滲み入る夜明け前から駅は呼吸をするかのように人を吸い込んでは吐き出し、日付が変わってもなおネオンの灯は煌めき続ける。そんな一日の中で刻一刻と表情を変える街を俯瞰し、新しい発見をもたらしてくれるホテルがある。大手町の一丁目に開業した「フォーシーズンズホテル東京大手町」だ。
日本で3番目となるフォーシーズンズホテルは、再開発地区「大手町ワン」の最上層階に位置する。専用エレベーターで39階まで昇り、フロアに足を踏み入れると、そこには心を奪われるほどの壮観な光景が待っている。窓一面に展開される大迫力のパノラマビューは、眼下に緑豊かな皇居外苑が広がり、遮るものがなく、東京の街をありのままに映し出す。新宿の高層ビル群が手に取るようにわかるだけでなく、晴れた日には富士山までも望める。
インテリア・デザインは、LVMHが運営するモルディブの「シュヴァル ブラン ランデリ」やアマンリゾーツを手がけてきたジャン=ミシェル・ギャシーが担当。白、ベージュ、グレーを基調としたカラーややわらかなテクスチャーなど、洗練された上品さをもち合わせながら、大きな窓からは自然光を大胆に取り入れ、開放感のあるつくりに仕上げた。心から寛げる「都会のリゾート」と言えるだろう。客室には、和紙を用いた障子風のドアや、イッセイ ミヤケのテキスタイルにインスピレーションを得た写真家・北浦凡子のアートワークが飾られ、茶方會(さぼえ)がセレクトした日本茶も用意されるなど、日本のおもてなしの美学も忘れない。
「都会のリゾート」で、初めて目にする東京の姿。
上質なリネンに包まれ穏やかな朝を迎えるのも捨てがたいが、できることなら日の出前に起きたい。早暁(そうぎょう)の空に紫のグラデーションがかかる瞬間は、静寂の中にピンと張り詰めた緊張感があり、息をのむほどに美しい。これまで見たことのない東京に出合えるはずだ。朝の日差しが、ビル群の合間を木漏れ日のように縫って皇居の森を照らす──それもこのホテルの立地だからこそ見られる景色。刻々とグリーンを明るく染め上げていく様子を、ビューバスに浸かりながら眺めるのもいい。
パノラマの絶景だけでなく、美食との出合いもこのホテルの醍醐味だ。日本各地の食材に新たな価値を付加する革新的なミシュラン・スターシェフ、ギヨーム・ブラカヴァルが腕をふるう「エスト」を筆頭に、3つのダイニングとバーを備える。夏にはオープンテラスから美しいサンセットや夜景を望める「ピニェート」は、本格的なピザ窯も構えたイタリアンダイニング。ティーソムリエがいる「ザ ラウンジ」では、スイーツとのティーペアリングや、日本茶の産地ごとの違いも楽しめる。
一日の締めくくりにぜひ訪れたいのが、バー「ヴェルテュ」だ。エストと共有するライブラリーエリアを抜けると、そこは「パリと東京が出合う」別世界が広がっている。ホテルのバーとしては珍しく、天井高が最大6m近くもある広々とした空間には、アール・デコ調のステンドグラスや家具と、江戸切子の職人が監修した照明や市松模様のタイルなどが共存。パリと東京の伝統が共鳴する場となっている。メニューには、「美徳」を意味する店名の通り、「仁」「義」「誠」など武士道に由来する7つの美徳にインスパイアされたオリジナルカクテルがあるところもにくい。
視点を変えることでいつもの風景も違って見えてくる。観光で訪れる人はもちろん、東京人が知らない「東京」に出合えるはずだ。
※Pen2021年2/15号「物語のあるホテルへ。」特集よりPen編集部が再編集した記事です。
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、掲載している内容から変更になる場合があります。
フォーシーズンズホテル東京大手町
住所:東京都千代田区大手町1-2-1
TEL:03-6810-0600
全190室 スーペリアルーム¥94,875(税・サービス料込)~
アクセス:東京メトロ、都営地下鉄・大手町駅直結
www.fourseasons.com/jp/otemachi