新たな形で未来へつなげる、国立競技場の記憶を留めた椅子。

新たな形で未来へつなげる、国立競技場の記憶を留めた椅子。

世界的なスポーツの祭典であるオリンピックの誘致は、都市の姿を大きく変貌させます。東京で初のオリンピックが開催された1964年には、いま我々が普通に使っている東海道新幹線や首都高速道路が開通、青山通りや環状7号線が誕生しました。そして、つい昨年5月に建て替えのために閉鎖された国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)も、「第3回アジア競技大会」メインスタジアムとしての使用を目的に1958年に建設されたもの。オリンピック終了後も、さまざまなスポーツ競技やコンサートの舞台として56年間愛され続けて来た国立競技場も、今年に入ってから解体工事が始まり、現在ではすっかり更地状態になっています。

そして、この歴史的建造物の記憶を新たな形で未来へとつなごうと「SAYONARA 国立競技場プロジェクト」が発足。その取り組みのひとつとして、国立競技場の観覧席で半世紀に亘り、さまざまな時代のドラマを見続けてきた“自由席のシート”に着目し、このシートを活用した椅子のデザインを3組のデザイナーに依頼することとなったのです。その3組が、国内のみならず、海外での活動も積極的に行うドリルデザイン、白鳥浩子、鈴木元。彼らは、競技場の解体以前に取り外されたこのシートを、「スツール」「チェア」「2人掛けのベンチ」と、現代的な家具へと変化させました。同じシートを使いながらも、三者三様のまったく異なる仕上がりになっているのが面白いところ。設計と製造は、日本最大級の木製家具メーカーとして知られる愛知県のカリモク家具が担当。製品にはカリモクのロゴと、国立競技場で使用されていたことを証明するプレートが付けられています。

全商品ともに8月23日まで期間限定発売。個数にも限りがあるプレミア品なので、購入希望の人は急いでチェックを!(猪飼尚司)

上段写真:「TOKYOスツール」を手がけたのは、ドリルデザイン。有機的な形をしたプラスチックの座面をシンプルな構造をしたソリ型の木製脚で支えるというもの。機能的ながら、現代的な軽やかさと美しさを兼ね備えている。

「ponyチェア」は、白鳥浩子のデザイン。歴史や記憶を受け継ぎ、次の場所、その先にある時間へとつなぐ架け橋となる椅子を目指した。座面が持つ愛らしい存在感、特徴的なフォルムを尊重しながらデザインした。

鈴木元による「KOKURITSUベンチ」は、2つの座席を組み合わせたもの。国立競技場と同じシートピッチを再現することで、隣り合った人との距離感やともに過ごす時間を大切にしてほしいという気持ちが込められている。

問合せ先/SAYONARA 国立競技場プロジェクト http://t.pia.jp/feature/sports/sayonaragoods/

新たな形で未来へつなげる、国立競技場の記憶を留めた椅子。