億単位の資金調達も夢じゃない⁉ 台湾のクラウドファンディング最前線。
いま台湾で、クラウドファンディングがにわかにブームになっている。たとえば前回の記事で紹介した企業の環境汚染履歴がわかるアプリを開発したNPO団体は、企業や政府から資金を受け取らず、一般からの寄付のみで成り立っている。そういった活動を支えているのが、クラウドファンディングのプラットフォーム「嘖嘖 zeczec」だ。彼らの環境保護プロジェクト「透明足跡」は、スタートから3カ月以内で4,100元(日本円で1億6,000万円以上)の資金を集めた。また2015年に発売され、「フォントを買う概念がなかった台湾人が初めて買ったフォント」と呼ばれる繁体字中国語のフォント「金萱」は、1カ月でおよそ2,593万元(約1億372万円)を調達し、その記録はいまだ破られていない。
「嘖嘖」で19年度に集まった資金調達総額は、5億元(約20億円)を超えているという。台湾の最低賃金は、現在2万3800元(約95,200円)であり、年々微増しているものの、低賃金が社会問題になって久しい。さらに、総人口はおよそ2,300万人。そんな台湾で、なぜこのような熱量が集まるのだろう。
「嘖嘖」共同創業者の徐震は1982年生まれ。2011年12月にこの「嘖嘖」を仲間5人で設立した際は、まさかこんなに大きくなるとは思っていなかったという。
「台湾でクラウドファンディングが盛んになったのは、14年に『ひまわり学生運動』が起こり、社会運動の資金源として活用されたのがきっかけでした。その後、社会運動や公共利益のために資金調達をするだけでなく、デザイナーやアーティスト、職人といったアート・カルチャー方面でも活用されるようになり、ここ最近ではゲームや出版、イベントなど多方面に広がりを見せるようになりました」と徐震は話す。
現在「嘖嘖」は、約22人のスタッフで運営。発案されたそれぞれのプロジェクトには専任のスタッフが付き、資金調達の成功率は6〜7割。成功報酬は達成額の8%だという。ユニークなプロジェクトが続々と生まれる台湾のクラウドファンディング事情から、当分は目が離せない。