通りごとの感染状況を伝えるマップは、隠蔽疑惑に対抗できるか?【コロナと闘う世界の都市から】
感染者数と死亡者数がアメリカに次いで世界で2番目に多いブラジル。サンパウロではようやく経済活動の再開が段階的に許可されるようになったものの、市民に自宅で過ごすことを推奨し、商業活動にも規制をかける社会隔離期間が継続中だ。この国のコロナウイルス軽視の第一人者といえば、経済優先を訴えるために自ら社会隔離政策を破る挑発的な行為を繰り返してきたボルソナロ大統領だ。こうした姿勢に異を唱え、4月から5月にかけて保健相2名が相次いで辞任。現在は、大統領に近しい陸軍の司令官が保健相代行を務めており、保健省はその指揮の下で感染に関するデータの公表を一時遅らせたり、内容を省略したりしている。
そんな中、サンパウロ大学建築学部所属の都市研究チーム「ラブシダージ(LabCidade)」が、5月半ばに市内の新型コロナウイルス及び重症急性呼吸器症候群での入院患者・死亡者所在地マップを公開した。入院患者・死亡者の郵便局番号が記録された保健省の公開データから制作されたこのマップは、街中の通りごとの感染状況が把握できることからSNSで拡散され、話題となった。
マップ発表時、ラブシダージ代表のラケル・ロルニック教授は、新型コロナウイルスの感染エリアを視覚で認識できるなどの意義を語り、研究チームは感染拡大が必ずしも貧しい地区に偏って発生しているわけでないと、市民社会全般に警鐘を鳴らした。同チームはその後も公共交通機関のルートや医療施設の位置が感染拡大に影響していないかなどの研究を続けていくと発表。だがその矢先に、保健省がプライバシー保護を理由に郵便番号を非公開としたために、研究は妨げられることに。研究チームはこれ対して、状況を矮小化しようとする保健省の情報隠蔽だと批判。市民はますます政府への不信感を募らせている。