ウェブ会議の画面だけでつくった、英BBCの“前例のない”ドラマが話題。【コロナと闘う世界の都市から】
世界中でテレビドラマや映画の撮影がストップする中、ロックダウン開始後に制作されたBBCのドラマ「Unprecedented(前例のない)」が話題だ。14人の脚本家が、1話約10分間のドラマでコロナ禍の日常を描いている。全14作品に共通するのは、ZOOMなどのウェブ会議ツール画面越しの会話劇であること。いまや見慣れた“分割画面”だけのドラマが面白いのだろうか?と半信半疑で見てみたのだが、クスッと笑えるコメディからぞっとするサスペンスまで、こんなにも多岐にわたる表現が可能なのかと驚き、全話を一気見してしまった。
たとえば「Penny(ペニー)」という作品は、ホームレスの男性がコロナ禍の特別措置で提供されたホテルで、ペニーという名の“誰か”に必死に語りかけるひとり語り。最後に“誰か”が路上生活ををともにした愛犬であることが分かる。「Safer(より安全な場所)」は、息子夫婦とその母とのなに気ない会話から始まるが、次第に息子がDV夫であったことが分かり、母は義娘の救出に動き出す。「Grounded(外出禁止)」は、コロナ禍のルールをまったく解せず朗らかに暮らす両親に、心配する娘が涙ながらに「ルールを守って」と訴え続ける爆笑コメディだ。
ロックダウンは、格差、貧困、DV、教育、医療などイギリスのもつさまざまな問題を浮き彫りにした。これらの作品はそうした問題を批判的な眼差しで見つめつつ、笑いや恐怖のひねりを利かせたドラマに仕立てている。コロナ禍のストレスや怒り、悩みを登場人物が代弁してくれており、そこに視聴者が共感できるのも人気の理由だろう。
制作は完全リモートで行い、リハーサルもすべてZOOMを使用。小道具や衣装、照明は俳優自らが担当し、撮影はウェブ会議画面を使用して行われた。有名俳優も多数出演しており、彼らの私生活や自宅のインテリアが見られるというおまけ付きだ。