スーパー店頭の食品寄付ボックスに見る、英国人の熱きチャリティー精神。【コロナと闘う世界の都市から】
イギリスはチャリティー(慈善事業)が日常に根づく国だ。普段の人付き合いはびっくりするほどそっけなく、隣人同士の付き合いもあまりしたがらない。しかし「vulnerable」な人、つまり心身および置かれた環境の厳しい社会的弱者に対しては、なんとしても力になりたいという熱すぎるほどのパッションがある。かかわり方はそれぞれだが、大小なんらかのチャリティーに参加している人はとても多い。
フードバンクを運営するチャリティー団体はイギリスに多数あるが、コロナ渦の現在、その需要はさらに高まっている。そこで各団体では、誰でも食品を寄付できる場所「フードバンク・ステーション」を拡大し、大手スーパーなど人の出入りの多いところに寄付用ボックスの設置を進めている。必要とされているのは缶詰、パスタ、紅茶、ビスケット、ロングライフ牛乳など、長期保存が可能なもの。
我が家の近所のスーパーにもステーションがあるが、見ていると本当にたくさんの人たちが寄付していく。家にある余りものを持参してボックスに入れる人もいるが、驚くのは、ほとんどの人がたったいま購入したものから何品かを、その場でポンポン入れてから店を後にすること。つまり、寄付用にわざわざ自費購入しているのだ。
ボックスはあっという間にいっぱいになるので、店員がこまめに空にしている。見知らぬ誰かへの優しさは、もらう側だけでなく、寄付する側の気持ちも温かくする。見えないウイルスは強敵だが、「でもきっと大丈夫」と思える光景だ。