パウダー・スノーの銀世界を、リーアム・ニーソンが血で染める。雪国サスペンス『スノー・ロワイヤル』

  • 文:細谷美香
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文:細谷美香

Profile : 映画ライター。コメディや青春映画から日々の生きるエネルギーをもらっている。クセが強くて愛嬌がある俳優に惹かれる傾向あり。偏愛する俳優はニコラス・ケイジです。

パウダー・スノーの銀世界を、リーアム・ニーソンが血で染める。雪国サスペンス『スノー・ロワイヤル』

ノルウェー版のオリジナルではステラン・スカルスガルドが演じた主人公に、リーアム・ニーソン。© 2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED.

娘を救いたい一心で、法律など完全に無視してバンバン人を殺していく……。そんな異常に頼りがいのあるパパを演じた『96時間』は、アクションもイケる演技派俳優、リーアム・ニーソンの代表作のひとつです。愛する者のためなら無敵になる男の役がハマる彼が、またまた無茶な主人公を演じた作品が、『スノー・ロワイヤル』。雪深い町を舞台に、リーアムパパが悪人を次々と血祭りに上げていきます!

雪に包まれた町、キーホーで除雪作業員として生真面目に働いてきたリーアム演ずるネルズ・コックスマン。その仕事ぶりが認められて模範市民賞を受賞した矢先、ひとり息子が誰かと間違われて、麻薬組織に殺されてしまいます。復讐を決意したネルズは、誰にも頼らずに復讐することを決意しますが……。 

実はこの作品、ノルウェー人が生んだ鬼才、ハンス・ぺテル・モランドが自身の監督作『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』をセルフリメイクしたクライム・ムービー。ネイティブ・アメリカンの組織を登場させ、主人公の目論見とは関係のないところで勃発してしまった抗争の行方も描いていきます。

パウダースノーに包まれた銀世界を染める血、凍りそうな滝に投げ捨てられる死体など映像の鮮やかさ(?)もさることながら、脚本の緻密さはこのアクション・サスペンスの大きな魅力。幼い息子のおやつの成分まできっちり気にするヘルシー志向のボスをはじめ、悪者たちもクセの強いキャラクターばかり。「死体を金網で包めば魚のエサになるしガスで膨らまない」と淡々と語るネルズには、すみませんホントに素人ですか……?  と疑問を抱かずにはいられませんでしたが、除雪車乗りだからこその復讐方法には、説得力があります。

コーエン監督の代表作『ファーゴ』のようと評されるのは雪国、殺人、女性警官の存在のほかにもオフビートなユーモアが共通しているからかもしれません。死人が出るたびに、ご愁傷様でした……とばかりにスクリーンに名前だけが映し出されるシーンもジワジワきます。すでに暑い日が続く今日この頃、北欧の新たな才能が放つ雪国サスペンスで涼んでみてはいかがでしょうか!?

麻薬王を『オリエント急行殺人事件』のトム・ベイトマンが演じています。© 2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED.

舞台はスキーリゾート地、ネイティブアメリカンの組織が物語のキーに。© 2019 STUDIOCANAL SAS ALL RIGHTS RESERVED.


『スノー・ロワイヤル』

監督/ハンス・ペテル・モランド
出演/リーアム・ニーソン、ローラ・ダーン、トム・ベイトマンほか
2019年 アメリカ映画 1時間59分 
6月7日より全国の映画館にて公開。

https://snowroyale.jp