妊婦や同性カップルの「交通標識」が登場。デザインからジェンダーギャップを埋められるか?
スイスのジュネーブで新たな交通標識が導入された。この標識の中で横断歩道を渡っている「人」のピクトグラムは、帽子をかぶった男性の形ではなく、妊娠している女性や高齢の女性、そして同性のカップルだ。日常的に目にする「人」を表す標識が当たり前のように男性で、カップルといえば男女の組み合わせのみ、ということに疑問を呈するデザインとして話題を呼んでいる。
この標識を提案したジュネーブ元市長のサンドリーヌ・サレルノは、交通標識のピクトグラムが男性なのは、「公共の場が男性のものだった」という歴史に端を発するものであると言う。ジュネーブではまた、交通標識とともにこれまで男性の名前を冠することが多かった「通り」にも、女性の名前を増やすプロジェクトを推進している。
実は今年、スイスで女性参政権が導入されてから50周年となる。スイスの女性が政治に参加する権利を初めて得たのは1971年とかなり遅く、90年まで認められなかった州もある。これはスイスが直接民主制をとっているためだ。つまり、女性が参政権を得るための憲法改正を、男性が投票で決定するかたちだったために導入が遅れたのである。
また、歴史的に市民の権利が「兵役義務」と密接に結びついているということも理由として挙げられる。兵士として戦える人だけが戦争や政治への意思表示ができるのだ、という考え方である。しかし、いまやスイス国民議会に占める女性の割合は4割を超える。
とはいえジェンダーギャップ指数は2020年時点で18位(日本は121位)と、北欧などに比べて低く、保守的な傾向もいまだ強い。デザインのアプローチで、その現状に一石を投じることができるのか? 今後の動きが気になるところだ。