あの中田ヤスタカが、北陸新幹線の金沢駅発車予告音をプロデュース!
実は中田さんは金沢の出身。金沢市の山野之義市長は「新幹線の先駆的なイメージを表現するのにふさわしい」として制作を依頼したそうですが、ではご自身はどのようなイメージで制作にあたったのでしょうか?
「金沢で飲食店とかに入ると、お店で流れているのはたいていお琴とかの和風の音楽だったりするんですよ。それが日常のことで、僕はずっと日本全国そういうものだと思っていたんですけど、東京やほかの都市に行ってみたらそんなことなかった(笑)。金沢がそうやって日本っぽさを残した街づくりをしていたことを、僕は東京に出てきてから気づいたんです。思えば金沢は木や石が多くて、街全体が和風なんですね。“和風であることを推したい”という以前に、もとから和が沁み込んでいる。でも何かを創造するときには、そこに現代的な要素をミックスさせるのも好きな街な気がします。“伝統”と“いまじゃなきゃできないもの”を両立させるのが好きな、とでもいうか。だから、その両方を考えて音を作りました」
発車予告音は15秒。音のあり方として意識したのは次のようなことだったそうです。
「発車音ってことは、要するにベルの機能をもってないとならない。“ファ~~”っていう柔らかな音だったり落ち着く音だったりじゃいけないわけです。なので緊張感とかアタック感を意識しましたね。それとさっき言った金沢っぽさ。もっといろんな音を入れてゴージャスにしても面白いんだけど、そうすると鳴ったときに周囲の音と混ざってしまう。そうやって考えながら機能に合わせていくと、自ずと絞られていくわけです。こういうものをつくったことがなかったので、すごく面白かったですね。だって、記念すべき音楽じゃないですか。毎週新しくなるものでもないし、発売するためのものでもない。そういう音楽を作ることに、いまはすごく興味がありますね」
「自分でもそう思ってますね。いまはすごくでかいEDMフェスでお客さんも盛り上がっていますけど、そういうところで機能してるのって、あるフレーズがかかったらみんなが一斉に“キターっ!”ってなるものがほとんどというか。要するに人数の多い現場向けなんです。そういう機能なわけですね。それに対して僕はどっちかというと、ちゃんとリスニングもできるものをつくりたい。音の派手さやノリで突っ走るものだけをつくりたいわけではないんです。僕はDJもやってますけど、DJだけじゃなくミュージシャンとして音楽をつくることも楽しいと思っている。今回のアルバムはライブをするという前提でつくったので、そういう機能も入れてますし、EDMと呼んでもよいとおもいます。ただし、ちゃんとリスニングできる音楽にもなっているし、コード感など面白いと思えるようにつくっているので、そういう点にも着目して聞いてもらえればうれしいですね」
新幹線の発車音にしても、自身のユニットの作品にしても、まずは機能性に重きを置いて音を創造する。それが時代を捉えて結果を残すことの大きなポイントなのでしょう。ちなみに、発着音は以下、金沢市の公式ホームページからダウンロードが可能です。(取材・文/内本順一)
●金沢市公式ホームページ 発車メロディのダウンロード