『風の谷のナウシカ』 からカミュの『ペスト』まで、パンデミック時代の生きる術を名著から学ぶ。
生理学者ジャレド・ダイアモンドが記すように、人類史は疫病の歴史でもある。コロナ禍をどのように乗り越えるべきか、不朽の名作を手に考えよう。
勇敢な王女の物語から、現代文明の未来を見据える。
道行く人がみな、マスクを身に着け始めた時、多くの人がこう思ったのではないか。「まるでナウシカの世界だ」と。映画『風の谷のナウシカ』は言わずと知れたスタジオジブリの代表作だが、漫画版を読んだ人はむしろ少数派だろう。漫画版はときに子どもには理解し難いほどのリアリズムと血の匂いに満ちている。環境汚染が極限まで進んだ世界を浸食する「腐海」は猛毒を出す樹々と、それらを守る巨大な「王蟲(おうむ)」たちの楽園。人類はそれらに怯えながら、瘴気マスクを身に着けて暮らしている。辺境の王国「風の谷」の王女ナウシカは腐海が生まれた秘密を直感的に見抜く。そして猛毒の森を焼き、王蟲を殺すのでなく、それらとともに生きる未来を模索する。7巻すべてを読了した者は、現代の地球環境について慨嘆せざるを得ないはずだ。
人類の歴史を、病原菌から読み解く。
世界の民族が、それぞれ異なる歴史の経路をたどったのはなぜか。UCLAで教鞭を取るジャレド・ダイアモンドが銃と鉄、そして病原菌をキーワードに人類史を大きなスケールで描いたピューリッツァー賞受賞作だ。本書をひも解けば、人類が定住して以来、さまざまな病原菌に勝利し、破れ、共存してきたことがわかる。コルテスによるアステカ帝国の滅亡、ピサロによるインカ帝国征服。そして、コロンブスの新大陸発見以来200年のうちに先住民の人口は95%が減少した。ヨーロッパ人は確かに、先住民よりも優れた武器を持っていた。しかし圧倒的な多数者である先住民が滅んでいったのは、西欧人が病原菌という「とんでもない贈り物」を持ち込んだからだと説く。コロナとともに生きる現代人必読の書だ。