ゆらゆら漂うリズムに癒されませんか? 摩訶不思議なクラゲの楽しみ方。
海の中にいるかのような錯覚に陥る巨大水槽、色とりどりに照らすライティング、びっくりするくらい形や動きが違う多種多様な種類の展示――。各水族館が工夫を凝らした美しく幻想的なクラゲの展示が注目を集めている。特に今年は、すみだ水族館が「ビッグシャーレ」、サンシャイン水族館が「海月空感(くらげくうかん)」、京都水族館が「クラゲワンダー」を新たに設置するなど、リニューアルが相次いだ。またクラゲの拍動(収縮活動)は、一定の規則の中に不規則な動きが含まれた「1/fゆらぎ」にも通じる癒し効果があるのではないかと注目されている。クラゲ愛好家の平山ヒロフミさんに、この不思議な生物が人々を魅了して止まない理由、そして水族館での楽しみ方について聞いた。
クラゲウォッチを20年以上続ける平山さん。近年のブーム以前は、鑑賞用の美しい生き物として捉えられていなかったと指摘する。クラゲといえば中華料理の食材。もしくは海で刺されてしまうもの。水族館ではイルカやペンギンなどの人気者に比べると、マイナーな存在だった。そうしたなかでイメージが変化したのは、水族館の飼育技術が上がったことが大きいと分析する。
「昔は生態自体がよくわかっていませんでしたが、水温をどれくらいに設定し、どんな餌をあげるべきかといったノウハウが蓄積されてきました。おかげで複数種類を常時展示できるようになりました。そして美しいライティングを使うなど、見せ方を工夫するようになりました。その美しさや不思議な生態を紹介するテレビ番組が増え、SNSで写真が拡散されるようになりました。水族館側は手応えを感じてさらに力を入れる、という循環があります」
平山さんが最初にクラゲに魅了されたのは約20年前のこと。勤務先近くの江ノ島水族館(現・新江ノ島水族館)を訪れた時、優雅で不思議な姿が強く印象に残ったという。しかし、帰宅後にインターネットでクラゲについて調べてもほとんど情報が見つからない。その得体の知れないミステリアスさに、さらに好奇心をかき立てられた。その後、山口県の水産大学校でクラゲを研究していた上野俊士郎教授(当時)に直接連絡を取って学ぶなどしながら奥深い世界に入り込み、上野教授とともにクラゲ愛好のコミュニティ「jfish(ジェーフィッシュ)」の運営を始めた。
クラゲの魅力は「人知を超えた美しい造形」や「癒やしの力」にあると平山さん。花と同様の複雑さや多様な美しさをもち、いまだに飽きることがないという。特にお薦めの種類はギヤマンクラゲ。ギヤマンとは江戸時代のガラス製品のことで、無色透明の透き通った傘と細い糸のようにたなびく触手が特徴的だ。「とても繊細で美しく、芸術的でさえあります。これだけ透明なのに、生き物として必要な器官をすべて持っている点も神秘的です」