親しい仲間たちで作りあげた、だからこそ親密で愛くるしい、ハンナの奔放な...

親しい仲間たちで作りあげた、だからこそ親密で愛くるしい、ハンナの奔放な恋愛劇。

昨年、『フランシス・ハ』が公開され、日本でも人気に火がつきはじめたグレタ・ガーウィグ。彼女が小悪魔のような魅力で、男たちを次々と手玉にとるのが、2007年の主演作『ハンナだけど、生きていく!』です。ここでの彼女がもう、なんてキュートなことか。

「疲れた!」とか「面白くなりたい!」とか、友人にやたらとぶつくさ言っているハンナは、大学を卒業して制作プロダクションで働きはじめたばかりの奔放な女の子。恋人が仕事を辞め、彼女いわく「プロの無職」になったことをきっかけに、ハンナは彼と別れ、同僚の脚本家ポールといい感じになっていきます。ところが、そう思ったのも束の間。今度はポールと職場をシェアしているマットに気移りして、彼女の恋心はあちらからこちらへと大きく揺れ動き……。

 この作品の興味深いところは、親しい仲間たちが集まって、脚本作りを行うことなく、即興の芝居をもとに撮影を重ねていったところ。「私たちがこの映画を作ったのは、それが楽しかったから」グレタ・ガーウィグは言います。そして、こう続けます。「私たちは朝起きて、一緒に朝食を食べ、そして言うの。『今日は何を撮影したい?』って」。

監督のジョー・スワンバーグをはじめ、この映画に参加しているのは、2000年代以降のアメリカ・インディペンデント映画でひとつの潮流をなす“マンブルコア派”の面々。マンブルコア(=もごもごつぶやくこと)派とは、とにかく超低予算で、必然的に仲間うちで制作や出演を兼ねる、DIYな制作スタイルの一派。そして、等身大の登場人物たちが集い、酒を飲んでは、恋や友情といった身近なことがらに葛藤する、それがマンブルコア作品の大雑把な特徴です。だからこそ、耳もとでもごもごつぶやかれているような、親密で、愛くるしい、楽しさにあふれた作品ができあがるのでしょう、この『ハンナだけど、生きていく!』みたいに。

デジタル機材が気軽に利用できるようになった時代ならではの、お金がないということすら逆手にとった彼らの自由気ままな映画。つまりこれは、デジタル世代の“ヌーヴェル・ヴァーグ”とでも言うべき、新しい感性から生まれた作品なのです。(門間雄介)

大学を卒業したばかりの夏、ハンナ(グレタ・ガーウィグ)は幾つかの恋をフラフラと渡り歩きます。心の傷と慢性的なフラストレーションを抱えながら、彼女は無職になったボーイフレンドに別れを告げ……。

役者たちによって即興的に演じられる映画が好きなら必見。ヌーヴェル・ヴァーグの他にも、ジョン・カサヴェテスやウディ・アレンらの影響を受けた彼らの特徴は、その作風にも通じると言えます。

マンブルコア派と呼ばれる映画人は、ジョー・スワンバーグ、アンドリュー・バジャルスキー、グレタ・ガーウィグ、ジェイ&マーク・デュプラス、アーロン・カッツらが上げられますが、その全員が参加しているまさにスーパーバンド! な映画なのです。

『ハンナだけど、生きていく!』

監督/ジョー・スワンバーグ
出演/グレタ・ガーウィグ
2007年 アメリカ映画/1時間23分/
原題:Hannah Takes the Stairs/配給:IndieTokyo
2007年SXSW正式出品作品/2007年ボストン・インディペンデント映画祭正式出品作品/2007年サラソタ映画祭正式出品作品
9月19日より、イメージフォーラムにて公開
http://indietokyo.com/?page_id=1600

(C)Visit Films

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