「絵本ナビ」代表に訊く、大人が絵本を読む意義と“泣ける絵本”。
年間利用者数が1000万人超、日本最大級の絵本情報サイト「絵本ナビ」。その代表に、大人が絵本を読む意義とお薦めの“泣ける絵本”を訊いた。
対象年齢やテーマごとの細やかな分類と、作家へのインタビューや各種ランキングといった豊富なコンテンツを軸に、絵本専門サイトとして圧倒的なシェアを誇る「絵本ナビ」。その利用者数は年間1000万人以上で、登録タイトルは7万5000冊を超える。なかでも充実しているのが読者レビューと、新刊から名作まで多様なアプローチで検索できる分類システムだ。「男泣きする絵本」「美味しそう!な絵本」「アートな絵本」など、他にはないバラエティ豊かな切り口で、テーマに沿った絵本を薦めてくれる。代表の金柿秀幸さんは、絵本ナビの強みをこう語る。
「リアル書店での選書フェアは、期間が過ぎると本を片づけないといけませんが、ネットではテーマごとに選書した情報を無限にストックしていけます。こんな気分に浸りたい時にはこの絵本を、というように自分好みのセットリストをいつでも探せるわけです」
大人が自分のために読む、そんな絵本があっていい。
また、絵本ナビならではの画期的なサービスが、2000冊を超える対象の絵本をそれぞれ一度だけ通して読むことができる「全ページためしよみ」という仕組みだ。そんなことをしたら、買わずに満足して本が売れなくなるのでは? そんな疑問が浮かぶが、金柿さんからは聞けば納得の答えが。
「本屋に行って、絵本を読まずに買うことってないですよね。子どもが喜びそうな話か、絵のタッチはどうかなど、必ず中を見るはず。しかも絵本は気に入ったら何度でも読む。読まなきゃ買わないし、読んだら終わりではない」
実際に、このサービスを開始してから売り上げが何倍にも伸びた絵本も多いという。そんな、絵本のことならお任せという金柿さんに、大人にお薦めの絵本について訊いてみた。
「仕事などでプレッシャーを強く受けると、人は、むき出しでは戦えません。自分の心をガードしながら物事を処理する中で、本来は誰の心の根っこにもある瑞々しくやわらかな感性が、隅に追いやられてしまう。絵本は低刺激のメディアといわれますが、刺激の強いメディアから離れて余白の多い物語を読むことで、もといた位置に心をスッと戻してくれる。気づかないうちに抱え込んでしまったものを解き放つような作用が、絵本にはあると思います」
“泣ける絵本”とは別に、金柿さんが“心に残る一冊”として挙げてくれた『フレデリック』は、まわりとは違う考えや行動をするねずみが、ポジティブに認められるという話。大企業を脱サラして絵本の仕事をいちから始めた頃の自分の姿に、この物語が重なるという。そしてもう一冊。
「『スーホの白い馬』は、スーホの身に起こる不条理に悔し泣きしたくなりますが、仕事で理不尽な状況に遭遇することって、よくある話。そんな時に『これってスーホだよな』と自分の身をメタファーに置き換えれば、辛さを客観視できます。心に物語をもつと、いろいろな場面で使えますよ」
金柿さんのマイ・ベスト絵本『フレデリック』
冬に備えてせっせと食糧を集めるねずみたちの中で、変わり者のフレデリックだけがみんなと違って働かない。『アリとキリギリス』に状況は似ていますが、感じ方は逆。みんな、『働かないなら出て行け』とは言わずに彼の存在を認め、むしろ、君って詩人だねと誉めたたえるのがいい。フレデリックは色や光や言葉といった芸術をみんなに与え、人と違った個性でポジティブに受け入れられるんです。
絵本ナビを始めるきっかけとなった一冊『はらぺこあおむし』
起業準備をしながら育児に向き合っていた頃、生後2カ月の娘に読んであげた本です。言葉はわからないのに笑ってくれた気がして。絵本を介して笑顔のフィードバックがもらえる、これは面白いなと思ったんです。それから絵本に興味をもち、妻のママ友たちに「各家庭の人気絵本ベスト5」をリサーチしたことがレビューサイトを立ち上げるきっかけに。エリック=カールの絵本の美しさや完成度の高さには、大人もぜひ触れてほしいですね。
「絵本ナビ」ってどんな会社?
絵本にまつわる、あらゆる情報がここに。
絵本と児童書専門のインターネット書店および読者レビューのコミュニティサイトとして日本最大の規模を誇り、作家インタビューやコラムなどの読み物コンテンツも豊富に揃える。絵本関連のグッズ販売も手がける一方、全国での読み聞かせイベントをはじめとしたワークショップなども行う。
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