超自然現象を題材とした、不気味な展示に行列が。
冨安由真/アーティスト
心霊現象や神秘体験のような、非現実的な世界をモチーフにした作品を手がけてきた冨安由真。2015年以降は、五感、人によってはさらに六感で体感できる部屋型の作品にこだわっています。
18年3月まで北九州市立美術館で開催していた個展『(不)在の部屋──隠れるものたちの気配』では、空間全体を部屋に見立て、家具や小物とともに絵画や映像作品を配置。部屋に入るとポルターガイストのように突然、電気が点いたり音が鳴る仕掛けを施しました。さらに、新進アーティストを応援する資生堂ギャラリーの企画「shiseido art egg」のひとりに選ばれ、6月8日から7月1日まで個展『くりかえしみるゆめ Obsessed With Dreams』を開催。会場の形態を活かして空間を細かく区切り、歩きながら鑑賞する部屋型の作品を展開。外まで行列ができる、異例の人気展となりました。
能動的な企画で、共同体のあり方を模索する。
加藤 翼/アーティスト
2019年1月20日まで森美術館で開催中の、『カタストロフと美術のちから』展に参加中の加藤翼。東日本大震災後には、福島県いわき市で瓦礫の木材から塩屋埼灯台を模した構造体を制作し、500人の参加者とともに引っぱりおこす「11. 3 PROJECT」プロジェクトを行いました。森美術館ではこのプロジェクトを、映像と写真からなるインスタレーション作品として展示しています。
同作をはじめ、人々がロープを引いて巨大な物を動かし、それを写真や映像で記録したドキュメンテーションを展示する「引き興し/Pull and Raise」などで知られる加藤。作品を通し共同体のあり方を測るものだが、4人のアメリカ籍白人男性が互いにロープで縛られながら合衆国国歌を演奏する「Woodstock 2017」など、表現の手法は広がり続けています。
昔といまの技術を組み合わせ、時を形象化。
後藤映則/メディア・アーティスト
メッシュの立体を回転させ、スリット状に光を当てると、生命が宿ったかのように動きが出現する後藤映則の「toki-」シリーズ。立体は生物の動きを撮影、デジタルデータに変換し3Dプリンティングしたものです。ゾートロープ(回転のぞき絵)に着想を得、昔といまの技術を組み合わせて制作した本作は、本来は目に見えない「時間」が、動きからカタチとして浮かび上がります。
2015年に生まれた「toki-」は、16年にバレエダンサーの動きを表現した「toki-BALLET #01」へ、そして17年にはより空間へと表現を広げた「ENERGY #01」へと発展。さらに18年はオーストリアで開催するメディアアートの祭典、アルス・エレクトロニカで「Rediscovery of anima」を発表し、栄誉賞に選出。石や木などの原始的な素材を用い、太陽光によって生命感を表現するなど、新たな境地を見せました。
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…以上、「小袋成彬、あいみょん、ラブリほか、来年の飛躍に期待が集まるライジングスター10組。」でした。こちらの記事は、2018年Pen12/15号「今年最も輝いた表現者たちの軌跡 クリエイター・アワード2018」特集からの抜粋です。気になった方、ぜひチェックしてみてください。アマゾンで購入はこちらから