せつなさが身に沁みる、ねこの絵本3冊

  • 写真:青野 豊
  • 文:Pen編集部
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おうち時間が続くいま、大人も子どもも楽しめる絵本を紹介したい。絵本の世界ではさまざまな生きものが活躍するが、ねこもまた然り。それは現実の暮らしの中で、最も近しい存在だからかもしれない。ひととねこ、ねことねこ、せつなさが身に沁みる3冊を開いてみよう。

『ふたりのねこ』

つい先頃、大盛況のうちに東京での個展が閉幕したヒグチユウコ。彼女の初の絵本となったのが『ふたりのねこ』だ。制作のきっかけは「息子と息子の大事にしているぬいぐるみの事を書こうと思ったから」とヒグチ。そう、本書は、生きている「こねこ」とぬいぐるみのニャンコとが結んだ疑似家族の絆の愛しさが胸に迫る一冊。右で紹介した場面のニャンコの涙には、ふだん絵本を読まない男性たちからも「この絵だけで泣ける!」との声多し。グッチをはじめさまざまなブランドや洋画へのキービジュアル提供など、活躍の幅が広がるヒグチの今後に期待したい。

ヒグチユウコ 著 祥伝社 2014年

宇野亞喜良の描く「ねこ」の魅力全開の2冊

『2ひきのねこ』

宇野亞喜良の描くねこと少女像のファンは多い。その世界観を堪能できるのが本書。ももちゃんと飼いねこのボンボンこと「ぼく」との間に、ある日「すなこ」という妹分が割り込んできたからさあ大変! 幼い頃に兄弟で母親を取り合ったこと、学生時代に三角関係に悩んだこと。甘酸っぱい記憶が呼び覚まされる。宇野と敬愛し合う関係というヒグチユウコによる帯が付いており、最後のページの絵の中にも、とある遊び心が。ぜひ探してみて。

宇野亞喜良 作 ブロンズ新社 2017年

『あのねこは』

同じく宇野による絵とともに、多くの絵本の文章や翻訳を手がける愛猫家の詩人・石津ちひろが、いなくなってしまったねこのかけがえのなさを綴る。とにかくブックデザインが素晴らしく、読み進めて最後の4ページに至った時、各ページに配された文章が、考えに考え抜かれた末に生み出されたものだと気づくはず。また、見返しの意匠も、統制された絵の色づかいも、描かれる少女とねことのバランスも、宇野の巧みさにはさすがのひと言だ。

石津ちひろ 文 宇野亞喜良 絵 フレーベル館 2019年