外出自粛に全国的な学校休校。せっかくの大型連休も、子どもたちは自宅で退屈をもて余すはず。しかし、視点を変えれば、家の中でゆっくり過ごす時間は、絶好の読書タイムともいえる。そこで全国の人気書店の名物店主たちに、科学や自然などをテーマとした、子どもの知的好奇心を刺激する絵本をピックアップしてもらった。子どもだけではなく大人だって、手にすれば思わずページをめくってしまう絵本が勢揃いだ。
1.ブックハウスカフェの茅野由紀さんが薦める、『月でたんじょうパーティをひらいたら』
2.リーディンライティンブックストアの落合博さんが薦める、『絵とき ゾウの時間とネズミの時間』
3.イトヘンの鰺坂兼充さんが薦める、『はじまりが見える 世界の神話』
4.ちいさいおうちの越高一夫さんが薦める、『みずとはなんじゃ?』
5.しかけ絵本のメッゲンドルファーの嵐田さん一家が薦める、『メガビースト 絶滅した獣たち』
ブックハウスカフェの茅野由紀さんが薦める、『月でたんじょうパーティーをひらいたら』
地球では“当たり前”の出来事が、宇宙空間で起きた途端に“当たり前”ではなくなる。そんな不思議を描くのが、「ブックハウスカフェ」の茅野由紀さんがお薦めする『月でたんじょうパーティーをひらいたら』。月の上ではケーキのろうそくはつかないし、「だるまさんがころんだ」をしようにも声が伝わらずにうまくいかない。誕生日パーティーという身近な題材を取り上げて地球と宇宙を比較することで、宇宙空間がどのようなものかイメージできるのが本書の魅力。また、ストーリーと同時並行で「1961年に人類を月に着陸させる『アポロ計画』が始まりました」など、豆知識が随所に追記されていて大人も勉強になる。「物語としても知識本としても読めて、何度でも繰り返し楽しめる絵本」と茅野さん。読後は、「自分だったら月でこんなことをしてみたい」と、子どもと一緒に語り合ってみてはいかがだろうか。
ブックハウスカフェ
東京都千代田区 神田神保町2-5 北沢ビル1F
TEL:03-6261-6177
営業時間:11時~21時(月~金) 11時~19時(土、日、祝)
不定休(2020年4月末現在は臨時休業中、ネット販売受付中)
www.bookhousecafe.jp
リーディンライティンブックストアの落合博さんが薦める、『絵とき ゾウの時間とネズミの時間』
小人の国に流れ着いたガリバーに、「どれだけの食事量を用意すればいいのか? 表面積から割り出すべきか? それとも体積か?」と論じる小人の国の王様や博士のエピソードから始まり、小さな体の生き物と大きな体の生き物の生命の秘密を解き明かしていく。読み進めていくと、短命なネズミも長寿なゾウも、それぞれの時間軸で見れば、実は寿命に違いはないという衝撃の事実が明らかに。本書を紹介してくれた浅草の書店「リーディンライティンブックストア」の落合博さんはこう語る。「大きな動物と小さな動物の寿命は違う。けれど、違いには合理的な理由があり、優劣があるわけではありません。それは、人間の世界も同じであることを教えてくれます」。生命科学への知識欲を掻き立てられるだけではなく、「他者の視点に立って考える大切さ」も本書を通じて知ることができそうだ。
リーディン ライティン ブックストア
東京都台東区寿2-4-7
TEL:03-6321-7798
営業時間:12時~18時
定休日:月
http://readinwritin.net
iTohen ブックス ギャラリー コーヒーの鰺坂兼充さんが薦める、『はじまりが見える 世界の神話』
「世界ってどうやってできたの?」。そんな素朴な疑問に「神話」という観点から答えるのが、「iTohen ブックス ギャラリー コーヒー」の鯵坂兼充さんが紹介する『はじまりが見える 世界の神話』。本書では、20人の専門家たちが解説する20か国の「世界のはじまり」を読み比べることができる。解明できないものを、なんとか説明しようとしてきた人間の発想力に思わず舌を巻く。インターネットで簡単に結論が出てしまう時代だからこそ、子どもとともに読んでおきたい一冊だ。もちろん、画家の阿部海太さんによるイラストレーションも見どころのひとつだ。鯵坂さんは「世界中の複雑怪奇な神話を『知りたい!』という知的好奇心が、彼の絵によって掻き立てられます」と語る。
iTohen ブックス ギャラリー コーヒー
大阪市北区本庄西2丁目14-18 富士ビル1F
TEL:06-6292-2812
営業時間:11時~18時
※展示期間中の土~月のみ営業(2020年4月末現在は臨時休業中)
http://itohen.info
ちいさいおうちの越高一夫さんが薦める、『みずとはなんじゃ?』
長野県松本市で40年にわたって愛され続ける児童書専門店「ちいさいおうち」。店主の越高一夫さんのお勧めは、絵本作家のかこさとしさんの遺作となった『みずとはなんじゃ?』。身のまわりに存在する水が、どのような性質をもつ物体なのか。また、生活や地球とどう結びついているのかを、ユーモアあふれるイラストとともに綴っていく。「普段何気なく飲み、使っている水。本書を読めば、そんな水について子どもも大人も理解を深めることができます。お子さんと一緒に読む場合は、自分が知っているエピソードを交えながら読むと、より楽しんでもえらえるはずです」。なお、本書のところどころに作者のかこさんと思われる人物や、親世代にもなじみ深いあの人気キャラクターが登場。子どもと一緒に探してみるのも醍醐味のひとつだ。
ちいさいおうち
長野県松本市沢村3-4-41
TEL:0263-36-5053
営業時間:10時~18時30分(火~土) 10時~18時(祝)
定休日:日、月
www.chiisaiouchihon.jp
仕掛け絵本専門店メッゲンドルファーの嵐田さん一家が薦める、『メガビースト 絶滅した獣たち』
本を読むのは苦手……という子どもでも、必ず目を奪われてしまうのが、この『メガビースト 絶滅した獣たち』。推薦するのは、鎌倉に構える仕掛け絵本専門店「メッゲンドルファー」の嵐田さん一家。「仕掛けが非常に精巧です。絶滅してしまった生き物にはかつてどんなものが存在していたのかを、わかりやすくポップアップで教えてくれます」。翼竜のエウディモルフォドンや哺乳類の祖先といわれるキノグナトゥスなど一見、難しそうな名前が並ぶが、鮮やかなポップアップや随所に記された解説を読めば、すっと頭に入っていく。絵本を開けば立ち上る生き生きとした獣たちの姿は、子どもたちの心に焼き付くはずだ。
宇宙の不思議や生命の神秘。世界の成り立ちや、水の恩恵。そして、かつて地球に息づいていた古代生物たちの物語。大人であっても「知らなかった!」という声が漏れてしまう、数々の知識が詰まった絵本たちを、今回は紹介した。未知の世界に対する好奇心が旺盛で発想力豊かな子どもと一緒に読み、思考を深めていくことは、“内なる自分”の思考に向かう時間にもなる。“外の情報”にばかり気を取られがちないまだからこそ、絵本を開いて、豊かな時間を過ごしてほしい。
メッゲンドルファー
神奈川県鎌倉市由比ガ浜2-9-61
TEL:0467-22-0675
営業時間:10時~18時
定休日:水(2020年4月末現在は臨時休業中、ネット販売受付中)
www.meggendorfer.jp
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