Vol.47 巨匠ロバート・フランクが夏の記憶を束ねた、ビジュアル・ダイアリー・シリーズ最新刊。
先日ヨーロッパに買い付けに出向いた際、とある書店の写真集コーナーでふと目に留まった1冊がありました。モノクロームで織りなされる、穏やかな世界。写真の内側から鋭い感性と心地よい温度感が伝わってくるのを感じ、まるで良質な映画を観ているかのような錯覚に陥りました。
無事に帰国しPOSTに戻ると、ちょうど版元から届いたばかりだという報せとともにスタッフからこの本を受け取りました。はやる気持ちを抑えながら、そうっと封を解き、いま一度じっくり見なおしてみます。
この写真集こそ、現代の写真界における巨匠、ロバート・フランクの最新刊です。スイスで生まれ、のちにアメリカに渡り発表した伝説的な写真集『The Americans』は賛否両論あるものの、それこそが大きな爪痕を残した証です。その後のフランクは世界各地を旅して周るようになり、一時は映像制作に打ち込むこともありました。現代写真を語るうえで欠かすことのできない人物であり、国籍や世代を超えて支持を集め続けるフランクが手がけた本書の舞台は、カナダ・ノバスコシア州のマボウ。彼はここ何十年もの夏を、妻でありアーティストのジューン・リーフとともにこの地で過ごしてきました。雨風にさらされた木造の家屋での暮らしをこよなく愛し、その内外での出来事や訪れた人々の顔ぶれを捉えていたのです。2010年以降に勤しんできたビジュアル・ダイアリー・シリーズの最新作という位置付けでもある本作は、前作以上に個人的かつ暗示めいた作品が選ばれており、それらの写真群に自伝的な言葉の断片が添えられています。
余談ですが、2019年6月29日より清里フォトアートミュージアムでフランクの個展が開催されています。日本国内でも稀な、彼の大規模な写真展です。夏の予定に入れてみてはいかがでしょうか?
写真:ロバート・フランク
出版社:シュタイデル
ページ数:64ページ
サイズ:20.3×25.4 cm
ISBN-10:3958295509
ISBN-13:978-3958295506
出版年:2019年
価格:¥6,048(税込)