Vol.45 まるで白昼夢のような、小さな庭の世界を写したテリ・ワイフェンバックの最新写真集。
アートブックのあり方は千差万別。純粋に資料性の高さを追求したアーカイブブックもあれば、ひとつのオブジェをつくりあげるように上質な製本でしつらえたアートブックもあります。パリを拠点とするエディシヨン・グザヴィエ・バラルは、後者のように丹精なアートブックを手がける出版社です。
先日、今年刊行されたばかりの本がPOSTに届いた時、ことさら美しい佇まいの1冊が目に留まりました。アメリカ出身の写真家、テリ・ワイフェンバックの作品集です。2017年の春から夏にかけてIZU PHOTO MUSEUMで個展を開催したので、記憶に残っている方もいるかもしれません。はっとするような鮮やかな色彩と、まるで白昼夢のような浮遊感さえ覚える被写界深度の浅い写真を見れば、すぐさまワイフェンバックの作品だとわかるほど。作品自体が彼女の世界をとくと物語る、そんな写真家です。
今回の作品集の舞台はワシントンD.C.。ワイフェンバックはこの土地に、自身のプライベート・ガーデンをつくりました。この小さな小さな世界では、都市に住まう鳥たちが訪れては巣をつくっていました。彼女は視点を固定し、じっと構えてファインダーを覗きます。フレーミングされた視線の先で、季節は巡り、鳥たちの営みが繰り広げられている。時にぼやけて、時に明瞭な輪郭を帯びて、光と色に彩られたミクロの世界が織りなすダイナミズムが写真から感じられます。
深緑色のカバーの布地は、角度を変えると偏光して紫にも見えます。自然光に映し出されて移ろうこの秘密の庭の景色とも、どこか重なるように思えるのです。
写真:テリ・ワイフェンバック
出版社:エディシヨン・グザヴィエ・バラル
ページ数:96ページ
サイズ:26.0×20.5 cm
商品コード:ISBN 978-2-36511-237-6
出版年:2019年
価格:¥6,048(税込)