Vol.43 オランダの人気デザインスタジオ、トニックの25年の挑戦が1冊に。
かねてよりオランダ・デザインの面白さについて触れてきましたが、とりわけ圧倒されたのは、第一線で活躍するデザインスタジオが政党の選挙キャンペーンのアート・ディレクションを担うと知った時でした。政治団体が先鋭的なデザイナーにポスター類を依頼したことに、強い衝撃を受けたことを覚えています。
この選挙キャンペーンを担ったのは、アムステルダムを拠点とするデザインスタジオ、Thonik(トニック)。ニキ・ゴニッセンとトーマス・ウィデルスホーフェンが立ち上げたトニックは、おもにビジュアル・コミュニケーション(視覚伝達)やインタラクション・デザイン、モーション・デザインなどを得意とするスタジオとして活動してきました。クライアントの要望やプロジェクトに潜む特色をていねいに抽出し、鮮やかな色彩やアルファベットを用いてごくシンプルなビジュアル・イメージへとアウトプットする。余分な要素が削ぎ落とされた分、本質があらわになった視覚表現はいっそう訴求力を増し、一度見たら忘れられないほどのインパクトがあります。
創設25周年の節目に刊行された本書は、ふたりへのインタビューから始まり、彼らとの対話で出てきた11のキーワードを章立てにして構成されています。「radical(急進的な)」「independence(自立)」「expose(暴露)」「empower(力を与える)」など、いずれのキーワードも彼らの挑戦的な姿勢を鋭く突いており、トニックのデザインに対する理解が深まるでしょう。紹介されているプロジェクトには、彼らのコメントもそれぞれ添えられています。4半世紀にわたる取り組みを包括的にまとめたアーカイブ・ブックです。
※2013年~16年にウィデルスホーフェンが学長を務めたデザイン・アカデミー・アイントホーフェンを紹介した、第12回目の記事はこちらからどうぞ。
著:アーロン・ベッキー 他
ページ数:352ページ
サイズ:17.0×24.0㎝
ISBN-10: 303778556X
ISBN-13: 978-3037785560
出版年:2019年
価格:¥6,048(税込)