Vol.34 スイスのギャラリー「ハウザー&ワース」、...
写真・文:錦 多希子(POST/limArt)

Vol.34 スイスのギャラリー「ハウザー&ワース」、世界屈指のディーラーとなる20年の記録。

“Hauser & Wirth 20 Years” / Michaela Unterdörfer / Hauser & Wirth, Hatje Cantz
『ハウザー&ワース 20イヤーズ』 / ミヒャエラ・ウンターデルファー編 / ハウザー&ワース、ハッチェ・カンツ刊

 スイスのギャラリスト、イワン・ワースと、彼の公私ともにパートナーであるマヌエラ、そしてその母ウルスラ・ハウザーが、1992年にチューリヒで創業したギャラリー「ハウザー&ワース」。家族経営から始動したこのギャラリーは、のちの多角的な取り組みが功を奏し、いまや業界内で屈指の存在感を放つまでになりました。その活動は世界各地に支店を増やし続けるばかりか、ときに著名なキュレーターと手を結んで美術館での展覧会を開催したり、展覧会カタログ、研究書、アーティストブックといったさまざまな出版物を刊行するなど、多岐に渡ります。
 彼らの軸のひとつは、現存する作家のみならず、既に他界した作家の展覧会を開催する点ではないでしょうか。その始まりは、設立初期に遡ります。チューリヒの中心部にスペースを構えていた頃、彼らはアレクサンダー・カルダーとジョアン・ミロの展覧会を開催。これが契機となり、のちに物故作家の財団と協力して展覧会などを企画する独自のスタイルが確立されたのです。
 ハウザー&ワースの設立20周年を記念して刊行されたこのアーカイブ・ブックは1080ページにもおよび、もはや百科事典さながらの佇まい。彼らと関わりの深い作家をアルファベット順に紹介する各章では、これまでに見たことのない図版の数々はもとより、ごく個人的な記念品や往復書簡、展覧会の会場風景写真といった貴重な資料がふんだんに収録されています。ギャラリーが歩んできた軌跡を余すことなく凝縮したこのボリューム抜群の決定版を通じて、彼らの気概に触れてもらえたら嬉しいです。

巻頭・巻末にはアーティストたちのポートレートが連なります。モノクロで統一されたビジュアルはソリッドな印象で、それぞれの個性が光ります。

ハウザー&ワースにとって大切なパートナーのひとりでもあるコンセプチュアル・アートの作家、ロニ・ホーン展の告知ポスター。展覧会のみならず、彼女の作品集の制作にも積極的に携わっています。

20年分の年代記に続き、特に重要な展覧会をピックアップして紹介するページも。2001年にはゴードン・マッタ=クラークの展覧会も開催されていました。

“Hauser & Wirth 20 Years” / Michaela Unterdörfer / Hauser & Wirth, Hatje Cantz
『ハウザー&ワース 20イヤーズ』 / ミヒャエラ・ウンターデルファー編 / ハウザー&ワース、ハッチェ・カンツ刊
タイトル:『ハウザー&ワース 20イヤーズ』
編集: ミヒャエラ・ウンターデルファー
出版社:ハウザー&ワース、ハッチェ・カンツによる共同出版
ページ数:1080ページ
サイズ:28.5 x 21.4 cm
ISBN-10:3775735127
ISBN-13:978-3-7757-3512-4
出版年:2013年
価格:¥12,960(税込)