Vol.22 プロダクトをこよなく愛する、スイスの一流...
写真・文:錦 多希子

定期的に海外のひとつの出版社に焦点を当て、その出版社の本だけを取り扱うショップ「POST」のスタッフが、いま気になる一冊をピックアップ。今回、錦多希子さんが紹介してくれるのは、今年スタートしたばかりの出版レーベル「ダブック」から、スイスのクリエイターが愛用するプロダクトの写真集。スイスが誇る美しいプロダクトは、スイス国民にとってどのような存在なのでしょうか。

Vol.22 プロダクトをこよなく愛する、スイスの一流クリエイターたちのまなざし。

Famous Ordinary Things / Meret Ernst / DABOOK
フェイマス オーディナリー シングス / メレット・アーンスト / ダブック

用途性をもつプロダクト(量産される製品)は、フォルムの美しさだけではなく、そこに使い勝手のよさがあいまってはじめて、その手腕が発揮されるものだとつくづく感じています。

文化的発展のなかで生まれたプロダクトは、時代や国境、生活様式の変化を超えて脈々と受け継がれてきました。なかにはデザイン史の文脈の上でも重要だと見なされ、美術館に収蔵されるに至ったものがあるほど。息長く支持されている名品は、それ相応の理由を携えているものです。

ところで「スイス」といえば、どんなイメージを思い浮かべますか? アルプス山脈、永世中立国、ヨーロッパの中央部分に位置する立地……。さまざまな経緯が重なって、磨きのかかった感性と持ち前の実直さとが交差し、揺るぎない信頼を獲得しているように見受けます。そのスイスが生んだ傑作といえば、マックス・ビルがデザインしたウルムスツール、カランダッシュの筆記具、スウォッチの腕時計、Rexのピーラー……枚挙にいとまがありません。華美さとは対極にある質素で控えめな佇まいは洗練された印象を与え、精巧さが高い品質を裏付けています。

実のところ、こうしたプロダクトはスイス国内ではどのように浸透しているのでしょうか? 果たして、日々の暮らしのなかでどのように馴染み、愛用されているのでしょうか? 今回は、これらの逸品が生活に根ざした様子を垣間見られる一冊をご紹介します。

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