定期的に海外のひとつの出版社に焦点を当て、その出版社の本だけを取り扱うショップ「POST」のスタッフが、いま気になる一冊をピックアップ。今回、錦 多希子さんが紹介してくれるのは、デザインの世界において「スーパーノーマル」を提唱するジャスパー・モリソンが手がけた、シンプルで昔ながらの道具を紹介する写真集です。
Vol.18 「普通」であることはネガティブか、ポジティブか?
「デザイン」という言葉から連想する時、なにか斬新なものや、装飾性の高いものを思い浮かべることが多いのではないでしょうか。問題解決のため、あるいはより優れたものを生みだそうというところから始まった創作が、しだいに手を加えることに拍車がかかってデザインされ過ぎた状態に陥り、結果として実用性が削がれてしまった……といったように、本末転倒の事態に発展してしまった例も少なからず見受けます。いくら目を引くことがあっても、本来そのものがもっている純粋な魅力が薄らいでしまったとしたら、普遍的な価値を損ないかねません。こうなると、せっかくの創意工夫も台無しです。
こうした装飾過剰の傾向が見受けられるデザインのいち潮流に対して、一石を投じ続ける人がいます。その名も、ジャスパー・モリソン(1959年ロンドン生まれ)。現在ロンドン、パリ、東京を拠点にめざましい活動を繰り広げる、世界的に著名なデザイナーです。彼は、日本を代表するデザイナーの深澤直人氏とともに「スーパーノーマル」と称するデザイン理念を提唱しています。2006年に開催された「スーパー・ノーマル展」が記憶に残っている方もいらっしゃるかもしれません。