Vol.06 「アートブック」でもあり、「アーティスト...
写真・文:錦 多希子

定期的に海外のひとつの出版社に焦点を当て、その出版社の本だけを取り扱うショップ「POST」のスタッフが、いま気になる一冊をピックアップ。今回、錦多希子さんが選んだのは、約300タイトルの美術書を世に送り出してきた出版社の取り組みを総括する展覧会のアーカイブ本。一点物とされる美術作品と、複製のできる印刷物との間に立ちはだかる境界線に迫ります。

Vol.06 「アートブック」でもあり、「アーティストブック」でもある一冊。

Roma Publications at Fondazione Giuliani, Rome
ローマ・パブリケーションズ アット ジュリアーニ財団(ローマ)

「POST」には、オランダのグラフィックデザインや写真に関する本が多く並んでいます。この原点をひも解くには、「POST」の前身である「limArt」時代からおもにヨーロッパを中心に古書を買い付けに出かけていた時点に遡りますが、なかでもアムステルダムへは20回以上も訪れていました(記事の都合上、詳しい話は以前のエントリーなどに話を譲ることにします)。自らの足や感覚をフル活用して動くなかで数多くのクリエイターたちと出会い、協働して書籍の出版や展覧会の企画を実現してきました。

仕事を通じて多くのご縁をいただきながらも、実は私個人はこれまで一度もオランダを訪れたことがありませんでした。書店員としてお客さまにその魅力を伝える立場である以上、これでは説得力に欠けるなぁ……と自戒を重ねた末に「生身を通じて現地の空気感に触れなければ!」と思い立ち、急遽休暇をいただいて先月念願のアムステルダムへと行ってきました。今回は肌感覚で得たアムステルダムのアートブック事情をお伝えできればと思います。

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