定期的に海外のひとつの出版社に焦点を当て、その出版社の本だけを取り扱うショップ「POST」のスタッフが、いま気になる一冊をピックアップ。今回、中島佑介さんが選んでくれたのは、今日のアートブック出版界を牽引する存在であるラース・ミュラーが手がけた本。これを読めば、スイスのデザインがグッと身近なものになりそうです。
Vol.03 100年間を振り返る、スイスデザイン史の集大成。
前回の記事で紹介したウィム・クロウェルは、あるインタビューで「50年代から80年代のスイスのグラフィックに影響を受けた」と語っています。その彼に大きな影響を受け、現在のスイスで最も重要な出版社を築いたのがラース・ミュラーです。自身の名前を冠したLars Müller Publishersはデザインに特化したコンテンツの書籍をていねいにつくり続け、今日のアートブック出版界を牽引する存在と言っても過言ではありません。ラース・ミュラーは1955年にノルウェーで生まれ、1963年からはスイスを拠点としています。若い頃からグラフィックデザインを志し、チューリッヒでデザイナーとしてのキャリアを始めた頃、長期旅行で訪れたのがアムステルダムでした。アムステルダムではウィム・クロウェルに出会い、彼が設立メンバーに名を連ねるデザインスタジオ「トータル・デザイン」でアシスタントとして1年間の勤務を経験します。「クロウェル氏のもとで働いた経験はその後のキャリアに大きな影響を与えた」とラースも語っています。