模型で日本建築の成り立ちを学ぶ、東博『日本のたてもの—自然素材を活かす伝統の技と知恵』。

  • 写真・文:中島良平
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展示の入口で出迎えるのは「塔婆建築」。法隆寺五重塔を最古として、木造多重塔は時代を超えて国内各地で建設されてきた。外観は一定の規格を保持してきたが、構造は技術の進歩とともに変化を続けてきたという。左から、「一乗寺三重塔 1/10模型」「法隆寺五重塔 1/10模型」「石山寺多宝塔 1/10模型」

東京国立博物館、国立科学博物館、国立近現代建築資料館の3館で同時開催されている『日本のたてもの—自然素材を活かす伝統の技と知恵』。国内のさまざまな建築物を模型で紹介するこの展覧会において、東京国立博物館 表慶館で行われているのが、「古代から近世、日本建築の成り立ち」をテーマとする展示だ。

そもそも文化庁では1960年より文化財建造物模写・模造事業を行ってきた。模写図を製作する目的は、経年変化によって剥離や変色が進行する文化財建造物の、当初の鮮やかな姿を後世に伝えることだ。また一方の模造事業としては、歴史的建造物の修理を行う際にその方法を検証し、構造を記録保存するために建築模型が製作されてきた。2020年12月17日に日本の「伝統建築工匠の技」がユネスコ無形文化遺産に晴れて登録されたが、徒弟制度における伝承に加え、その技と知恵をより長く残すための試みが具現化した例のひとつが、ここに展示されている建築模型だ。

手前は、弥生時代後期の稲作集落の住居である「登呂遺跡復元住居 模型」。奥に見えるのは、数少ない国宝指定の茶室のひとつ「如庵(旧建仁寺正伝院茶室) 1/5模型」。

弥生時代の稲作文化を伝える登呂遺跡の復元住居や江戸時代の民家などで住宅の歴史を辿り、6世紀後半に大陸から伝わった寺院建築の日本での発展を読み解く。さらには、天皇制の成熟とともに発展した宮殿建築、やがて各地を支配する士族の権力の象徴となった城郭建築。緻密に再現された建築模型を見ながら、それぞれの建造物が建てられた時代を想像し、足を踏み入れた内部の様子を思い浮かべる。新型コロナ禍で気軽に観光しにくいこのご時世、建築模型の数々を見ながら、時空を超えた脳内旅行を楽しみたい。

「東福寺三門 1/10模型」。1969年から77年にかけて行われた大規模な修理を機に、特徴的な構造を表現するために分割模型が製作された。奥の展示室に見えるのは、松本城の天守閣の模型。

「明治度大嘗宮 模型」。天皇の収穫儀礼のひとつで、皇位継承の際に行われる大嘗祭に用いられる建物群。明治天皇即位の頃に、式部職によってこの模型が製作された。

「旧北村家住宅 1/10模型」。貞享4(1687)年の建築年代が明らかになっている神奈川県秦野市の農家の住宅建築。1967年に移築解体が行われ、竈や囲炉裏なども再現して暮らしの様子を伝える模型が製作された。

日本のたてもの—自然素材を活かす伝統の技と知恵
【古代から近世、日本建築の成り立ち】

開催期間:2020年12月24日(木)〜2021年2月21日(日)
開催場所:東京国立博物館 表慶館(上野公園)
東京都台東区上野公園13-9
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時30分〜17時
※会期中の1月2日、8日、9日を除く金・土曜は21時まで開館
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月、12月26日(土)=2021年1月1日(金・祝)、1月12日
※ただし、1月11日(月・祝)は開館
※事前予約制
入館料:一般¥1,500
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/tatemono/